一方で、正規雇用と非正規雇用の格差をゼロにすることは難しい、とも言う。「労働組合の人には怒られてしまうかもしれませんが、例えば、完全な同一労働同一賃金は現実的に難しい。
でも、僕が経験した、非正規公務員の年収が正規の3分の1というのは極端すぎる。8掛け、7掛けくらいなら、生活できます。どんな問題でも、ちょうどいい落としどころを、(正規労働者、非正規労働者を含めた)みんなで探すことが大事だと思うんです」
日産系列の会社員時代は「批判半分、懐かしさ半分」
ヨウジさんは、日産系列の会社員時代を振り返るとき、たびたび「日産らしさ」と言った。その言葉の意味を尋ねると、「批判半分、懐かしさ半分、といったところです」という。
「確かにあの社風では生き残れなかったかもしれません。でも、のんびりした日産だからいいと言ってくれるお客さんもいました。普通の能力の人が、普通に努力して、10年後、20年後の将来が描ける――。そんな会社があってもよかったんじゃないでしょうか」
再び夕方のオフィス。職場のテレビは、間もなく日産による会見が始まると伝えていた。同時進行で明らかになる「5年分の報酬 有価証券報告書に計約49億8700万円と記載」「実際は計99億9800万円」といったニュース――。
どっちにしても浮世ばれした金額に、日産時代の同僚たちの顔が思い浮かんだ。
上司の1人は日本年金機構へと転職した。正規職員ではない。また別の上司はコンビニエンスストアのオーナーとなり、夫婦で働いている。ある先輩は同業他社へと転職したと聞いた。当然、収入は激減だ。音信不通となった同期もいる。
「みんながもう少しずつ幸せになれる方法がなかったのかな、と考えてしまいます」
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