また、洋館建物の外観はイギリスのチューダー様式の洋館だが、当時最新の鉄筋コンクリート造だ。関東大震災後の宮家や富豪の邸宅と同様に強固な構造で設計され、今回の修理工事でも耐震補強はほとんど必要なかったという。
建物地階にはボイラー室が設けられ、昭和初期としては珍しい全館空調も実現されていた。各部屋には西洋館の室内装飾の要となる暖炉のマントルピースが見られるが、ここにまきをくべて燃やしていたわけではなく、空調の吹き出し口となっていた。
正面玄関から館内に入ると、まずは赤じゅうたん敷きの玄関ホールに目を奪われる。奥へ進むと豪華な木彫を施した階段が2階へと続いていて、この邸内一の見せ場となっている。1階にはこのほか応接室やサロン、大客室、小客室、来客を迎えた大食堂、家族の日常のために用いられた小食堂がある。
小食堂に残るカトラリー類
この小食堂に展示されている、かつて前田家で使用されていた食器、グラスやフォーク、ナイフなどのカトラリー類がなかなかの見もの。会食に用いられたシルバー製のポットやカトラリーはイギリスの老舗・マッピン&ウェッブ社に特注したもの。展示されているもののほかにも用途別、来客人数分の膨大な銀器を保有していた。
小食堂の隅には地下のキッチンから料理を運ぶ電動リフトもある。西洋の一流品とともに、日常生活のなかにはこうした最新の設備が取り入れられていた。
赤じゅうたんの華麗な階段から2階に上がると、こちらは家族のプライベート空間になっている。今回の復元プロジェクトではこの2階をメインに多くの内装がよみがえり、見どころが多い。
この館は戦後に進駐軍に接収され、マッカーサーに次いで連合国軍総司令官として赴任したリッジウェイの住まいとなった。リッジウェイの夫人は看護師であったため、清潔を旨とし、豪華な金唐皮紙の壁紙を真っ白な漆喰塗りに変えてしまった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら