偽ニュースは民主主義を壊す強大な「兵器」だ 煽情的なネット情報は「一歩ためる」構えを

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津田ファクトチェック・イニシアティブのように日本でもファクトチェックの動きは出てきましたが、欧米と比べると組織的にもまだまだ脆弱です。正直言ってこの10年間、日本のマスコミはネットにすでに流れている情報やデマをきちんと裏付け取材することをしてこなかった。その結果、名護市長選とかであんなにデマが流れて、選挙結果に影響したのではないかとも言われています。

僕は単独の新聞がやるのではなく全国紙が基金などをつくって対策をするべきと考えています。フェイクニュースの問題には思想的な右も左も関係ありません。そこで得た情報を各新聞社の判断で追加取材をする協業の仕組みがあってしかるべきです。

事例を多く知って啓蒙することが必要

加えて僕は「メディア・リテラシーを高めよう」という言葉自体を禁句にすべきだと思います。フェイクニュースの手段は超巧妙化しています。AIの自動生成画像はもう本物と見分けがつかないレベルになっています。とにかくたくさん事例を紹介していくことと啓蒙が必要です。ただ、「扇情的な情報をすぐリツイートするのはやめましょう」と言いつつも、自分も間違えた情報をリツイートしたりすることもあります。プロもだまされます。

ネット時代はメディア・リテラシーもどんどん変わっていく。新しいコミュニケーションサービスも誕生している。教科書的に教えることはなかなか難しい。ネットにある扇情的な情報は「一歩ためる」構えが必要という基本を教えるしかないのでしょう。

一田時代は大きく変わろうとしています。世界中にフェイクニュースがあふれ、過激な政党や政治家が台頭しているのは社会の根本が揺らいでいるからです。リテラシーという概念も変わります。日本にいると世界で何が起きているかがわかりにくい。

既存の社会が崩壊することはリスクであり不透明ですが、考え方を変えれば新しい時代の幕開けとも言えます。これからの社会とリテラシーのあり方を決めるのは今生きているわれわれなのです。

成相 裕幸 会社四季報センター 記者

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なりあい ひろゆき / Hiroyuki Nariai

1984年福島県いわき市生まれ。明治大学文学部卒業。地方紙営業、出版業界紙「新文化」記者、『週刊エコノミスト』編集部など経て2019年8月より現職。

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