偽ニュースは民主主義を壊す強大な「兵器」だ 煽情的なネット情報は「一歩ためる」構えを

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津田大介氏(右)からは「メディア・リテラシーを高めよう」と言うことを禁止しようとの提言もなされた(撮影:大澤誠)
「フェイクニュース」は民主主義を機能不全にしてしまうほどの強大な「凶器」ともなりうる。日々ニュースを消費、発信する私たちが知らないうちにその動きに加担してしまっているとしたら——。
メディア・アクティビスト・津田大介氏は『情報戦争を生き抜く』、IT企業役員を経てサイバーセキュリティに関する著作や小説を発表している作家・一田和樹氏は『フェイクニュース』をそれぞれ上梓した。
前回記事(「偽ニュース」への抜本的な対策はありうるか)に引き続き、今回はフェイクニュースと民主主義の関係、マスメディアに求められる役割、メディア・リテラシーについて語ってもらった。

津田大介(以下、津田)なぜこんなに急にフェイクニュースを使ったハイブリッド戦(直接的に兵器を使った戦争ではなく、サイバー攻撃などを駆使した他者への攻撃)が普及したのかをひと言で言うと、異様なコストパフォーマンスのよさです。

一田和樹(以下、一田)そうです。ソーシャルメディアの普及によって、急速にコストダウンが図られました。

津田昔は新聞やテレビなどのマスメディアを通じて大衆に情報を届ける手段がなかった。今は理論上、数千円程度の通信料とTwitter、Facebookアカウントがあれば、ほぼ情報発信コストゼロで、ときには100万人、1000万人、1億人にフェイクニュースを届けることができる。この大きな情報環境の変化がすべての原因になっていると言ってもいい。ネットやソーシャルメディアが普及したことで、それまでマスメディアによる寡占状態だった情報流通が民主化したわけです。

一田肯定的に言うと、そうなるのですね(笑)。

津田僕も最初はそう思ってたんですが……(苦笑)。しかし、「情報流通の民主化」は思わぬ副作用をもたらした。政府や権力を持つ人たちが、個人を装って世論をつくり出すことが簡単にできるようになってしまったわけです。

民主主義は「脆弱性」を抱えている

一田機能的識字能力の問題ではないのかもしれませんが、やはり必ずしも理性的に判断してくれる人ばかりではない。むしろそうではない人のほうが実は多い。私たちが有している自由とか、人権とか、多様性を重要なものとする価値観をどうやって守れる社会をつくるかが大きな課題になっている気がします。

津田一田さんが指摘している民主主義の4つの脆弱性も重要です。少数民族の存在、内部分裂、他国との緊張関係、脆弱なメディアのエコシステムを指しますが、アメリカはすべてがありました。しかも、プラットフォーム事業者のおひざ元だったから狙われたと。その4つの脆弱性を吟味していくと、実は日本こそやばいのではないかと思ってしまいますね。すべてにあてはまっているから。

一田ハーバード大学教授が執筆した『民主主義の死に方』という本のなかで、民主主義は民主主義によって殺されると書かれています。要するにあまり理性的でない人々が圧倒的多数で、その人が可視化されて声高く主張できるようになってきたために、ポピュリズムに陥って死んでしまうという話です。ジェイソン・ブレナン氏などの政治学者たちも同様のことを指摘しています。

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