偽ニュースは民主主義を壊す強大な「兵器」だ 煽情的なネット情報は「一歩ためる」構えを

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その次に独裁化が進む手法として審判を抱き込む、対戦相手を欠場させる、ルールを変えることの3点を挙げています。司法制度、法執行機関、諜報機関、税務、規制当局を為政者が取り込んだりとか、裁判所を抱き込んだりとか、裁判官にお友だちを任命するとかですね。あとはメディアを買収したり、圧力をかけて言うことをきかせたり、訴訟して逮捕させたりです。

津田大介(つだ だいすけ)/ 1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ポリタス編集長。早稲田大学文学学術院教授。テレ朝チャンネル2「津田大介日本にプラス」キャスターほか、ラジオのナビゲーターも務める(撮影:大澤誠)

津田最近の国内情勢の文脈で言えば、電波の周波数帯を競争入札方式にする電波オークション導入を政府がいきなり持ち出してきたりとかね。「放送法4条を撤廃しよう」という話もそうでしょう。AbemaTVのような「ネットTVをもっと増やそう」みたいな話がありました。

実際に日本でも起きてきていることですけど、その動きに対して既存の新聞やテレビも経済的に厳しいので、突っぱねる元気がなくなってきている。世界各国のメディアが曲がり角にきている感じがしますよね。

一田結局、今どうすべきか、対症療法的に目の前の課題に立ち向かうこともできるんですけど、おそらく民主主義の形は大きく変わるし、フェイクニュースの影響力によっては、もしかしたら民主主義という制度は機能しなくなってしまうかもしれません。次の時代どうなるか、そしてどうするかを決めないと、きっとメディアのあるべき姿も決められないでしょう。

株価操作にも使われるフェイクニュース

津田もう1つ、一田さんの本で重要な問題提起だと思ったのは、ハイブリッド戦が外交、政治の文脈で使われているだけでなく、株価操作にも使われていることです。実際にフェイクニュース1つで、株価が乱高下したりする。政治の文脈ではなく、経済や金融資本主義の文脈で、ライバル企業をおとしめるためにフェイクニュースを拡散することが大いにある。

トランプ氏が大統領になった直後に、トヨタなどの具体的な企業名を挙げてTwitterに非難的なツイートをしたときに株価が動きました。それを見てなのかシリコンバレーのある企業が、トランプ氏のツイートを分析して株を売買するプログラムをつくっていた。トランプ氏のツイートが何に対してネガティブに書いているかを分析して株を売買し、相当儲けたそうです。そんなテックベンチャーがあったこと自体が、世も末感しかないんですけど(笑)。

一田LidingoやDream Team Groupなどの金融市場に特化したネット世論操作の代理店もできているみたいですから、当然そういうのはやりますよね。アメリカの証券取引委員会(SEC)はすでにこの問題に取り組んでおり、フェイクニュースで株価操作を行った会社を摘発しています。金融資本主義は、おそらくどこかのタイミングで大きく変わるか、崩壊すると思っています。

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