弟子が語るドラえもんの知られざる"黒歴史" 国民的人気漫画はどう作られていたのか

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部屋も藤本先生は大部屋でアシスタント全員と机を並べ、僕らがギャーギャー騒いでても、横でベレー帽をかぶりパイプくわえて黙々と仕事していた。

一方、ほとんどのアシスタントがついてる安孫子先生のほうが1人個室でした。たまに2人でテレビに出ても、しゃべるのは8割方が安孫子先生。接待やパーティー、ゴルフも安孫子先生が担当。藤本先生はもともと社交的ではないので、絵描きに専念できて楽だったと思います。

雑誌の写真なんかで2人並んで写ってるけど、それはそのときだけ安孫子先生が隣室からやってきて、あたかも「いつも2人一緒です」ふうのポーズを取って、取材が終わればサッサと引き揚げていく。何かトラブルがあって2人で相談してたりすると、一ファンだった僕にはすごく貴重な光景で、見ててウキウキしたものです。

ドラえもんがウケたのは「丸いから」

──慣れたアシスタントさんは重宝したと思いますが、両先生は決して抱え込もうとしなかったとか。

ここは修業の場で長くいる場所じゃない、って言われましたね。自分の作品を早く描きなさい、と。だから当時は2〜3年で辞めるのが当たり前だった。アシスタントっていわば弟子。弟子が何年もいちゃいけないですよ、やっぱり。

弟子を早く一本立ちさせようと、藤子スタジオで同人誌『Q』を発行しました。いつまでもオリジナル作品を描こうとしないアシスタントたちに無理やり描かせて、各誌の編集部に配ってくれた。こんな新人がいますよっていうカタログですね。実際に、編集者の目に留まってデビューしていく人もいました。僕の『まいっちんぐマチコ先生』もこの同人誌が原点です。

──今も再生産され続けるドラえもん。その究極の魅力とは?

ストーリーはもちろんだけど、頭も胴体も目も鼻も、全部丸で描けるシンプルさが大きいんじゃないかな。丸ってやっぱりいいんですよ。シンプルなほどウケる。丸でデザインするって実は大変なことで、ドラえもんは丸で構成されたデザインの完成形なんじゃないかな。藤本先生の才能でしょうね。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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