そうした中で迎えた今期の大学入試の傾向は変わるのだろうか。
文科省は、2018年9月に「平成31年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)」を各私大に出した。そこで、2019年度以降の入学定員管理を厳格にする補助金の基準の導入は、当面見送ることとし、2016~2018年度において、私立大の定員超過に一定の歯止めがかかったことを理由に挙げている。3大都市圏の私立大の入学定員充足率は低下し、3大都市圏以外の地域では、2014年度の95.87%から2018年度には100.81%へ上昇した。
これにより、2018年度入試よりもさらに厳しく入学定員管理を2019年度に行わなければならないという状況ではなくなった。加えて、閣議決定された2019年度予算政府案には、私立大学等経常費補助金(一般補助)は2712億円計上され、2018年度より15億円増えている。
併願数を抑える学生が増えている
だからといって、すんなり合格者数を増やすわけにはいかない。なぜなら、先の文科省の通知によると、「当面」実施を見送るのであって、再び大都市圏に学生が集中するようであれば、入学定員管理のさらなる厳格化が求められるおそれもある。
とはいえ、定員管理の厳格化によって入学者数を減らした私立大は、受験者数の減少という別の打撃も被っており、漫然と文科省の指示どおりに入学者数を抑制し続けられるとは限らない。現に、入学定員管理が厳格化されるなら合格する可能性が低い大学を受験するのはやめ、併願する大学の数を抑える受験生が増えていることが、複数の調査から明らかになっている。
大規模大学だと、1人数万円の受験料を複数の学部で支払う受験生を延べ数万人集められれば、億円単位の受験料収入が得られる。それが、入学定員管理の厳格化のあおりで受験者数が千人単位で減るとなると、大学の収支が悪化しかねない。
入学定員を安直に超過すれば、やがて国からの補助金が減らされるおそれがある一方、合格者を絞り込んでいるとの印象を受験生に与えることで受験者数が減れば、受験料収入が減るおそれがある。私立大は、そうしたせめぎ合いに、今期の入試で直面している。
国からの補助金に頼らずに経営できる私立大ならこうした騒動に巻き込まれずに済むが、年間数百万円という授業料が一般的なアメリカの私立大学とは違う日本の私立大は、補助金にまったく依存しないとなると、授業料を大幅に値上げしなければ経営が成り立たない。
私立大への国の補助金の配り方が、受験生をヤキモキさせることになっては本末転倒だ。学生がさらに有意義な学生生活が送れるようにするよう、私立大にガバナンス改革を求めることも併せて、私学助成のあり方を改善していくことが重要だ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら