リッチモンドホテルが圧倒的に愛される理由 朝食にこだわる顧客満足1位ビジネスホテル

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代わりに、リッチモンドホテルが取り組むのが、既存ホテルを改築する際の「3点分離」だ。これはトイレ・バス・洗面台を別々に設置するというもの。利用者の室内で過ごす快適性への要求が高まるにつれて、従来の3点一体型(3点ユニットバス)は好まれなくなった。

3点分離した室内の様子(写真:ロイヤルホールディングス)

また、「アメニティ」で評価が分かれやすいのが、シャンプーやコンディショナーだ。これは髪質や好みによるが、同ホテルではオーガニック製品を用意している。過去には部屋の消臭剤をトイレタリーメーカーと共同開発したこともある。

ビジネス利用で最も気になる「価格」は、上位役職者以外は宿泊基準「1万円」の会社が多い。それを超えると、「合理的な理由」と「上司の許可」が必要となるので、その金額が安心して泊まれる基準のようだ。

だが、繁閑の価格差も大きい。競合ホテルの中には市場連動性で価格を大きく変えるところもある。「よく東京に出張しますが、『1泊素泊まりで1万6000円』という価格の日は諦めて、23区外の簡素なホテルに泊まりました」(30代の男性)という声も聞いた。

普段はホテル予約がしやすい地方の大都市も、大きなイベントがある日は料金が跳ね上がる。とくに予約が取りづらいのが、人気ミュージシャンのコンサート。なかでも「嵐」と「三代目J SOUL BROTHERS」公演のときだという。

繁忙期と閑散期の料金設定を、リッチモンドホテルではどうしているのか。

「超繁忙日での価格改定は行いますが、上限と下限の料金は4倍以内に収めています。でも、『何かあったら泊まれない』だと、常連のお客さまほど不満を持つでしょう。そこで『公式サイト会員専用プラン』からのご予約はベストレートにて案内し、シングルルームの10%を『会員専用枠』として提供しています」(福村氏)

「ホテル戦争」生き残りのカギ

こうした施策が顧客に受け入れられ、同社の業績は絶好調だ。2017年度の売上高は269億4300万円、経常利益41億900万円、経常利益率は15.3%となり、8年続けて増収増益。だが、不安要素がないわけではない。新規のビジネスホテルが次々にでき、東京地区は2020年に東京五輪を控える。昨年に基準が厳しくなった「民泊」も、以前の統計では、訪日外国人のうち、大阪地区では5人に1人が民泊利用だった。

「外国人宿泊客も全体の約17%ですが、大切なのは、どう競合ホテルと差別化していくかです。多彩な食事メニューもさらに深掘りし、2018年12月に改装した『福岡天神』(福岡市)のレストランでは、地元の久原醤油さんのだしや醤油を用いた朝食メニューの提供も始めました。こうした地域の特性を生かした取り組みは、さらに続けていきます」(福村氏)

ホテルチェーンの経営母体は日本では、建設、不動産、電鉄系は多いが、飲食系が運営するケースはほとんどない。「だからこそ食事内容にこだわる」と話す福村氏。チェックアウト直前に食べる朝食、食べられなかったお客に渡すケーキは、「そのホテルでの最後の体験」となり、宿泊客の印象に残りやすい。

限られた予算で泊まる消費者の「どこの・どんな要望に応えるか」が求められるビジネスホテル業界。リッチモンドホテルは、経営を安定させるために、常連客の「安心・信頼」に注力し、その評価を新規の客にも広げる戦略のようだ。 

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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