ホンダ「NSX」2019モデルはここまで進化した かつてあった繊細さや洗練さが増している

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ちなみにNSXは4つの走行モードが選択可能な「IDS(インテグレーテッド・ダイナミック・システム)を採用しているが、2016モデルは各モードで走りの方向性がバラバラだった。実はワインディングベストといわれるスポーツ/スポーツ+では、操作に対するクルマの動きはピーキーでドライバーと制御のズレも相まって運転しながらクルマ酔いしそうになって以来、一般道ではIDS不要論まで考えたほどだった……。

ハードウェアの能力を全方位でシッカリと引き出せるようになった2019モデル(筆者撮影)

しかし、2019モデルは走りの方向性が一貫したうえで走行条件に合ったベストな味付けになっているので積極的に使いたくなった。初代モデルで例えるならば、クワイエットはノーマル、スポーツ/スポーツ+はタイプS、そして今回は公道なので試していないがトラックモードはタイプS ZEROが1台に凝縮されているイメージだろうか。

2代目NSXの「新しいスポーツカーの経験」

2019モデルの試乗後に水上氏に印象を伝えると、「ある方に『スポーツハイブリッドSH-AWDを外してしまえ』と言われたこともありますが、電気を上手に使うことで走りの楽しさをアシストすること、絶対的な重量があっても軽快感を出せること、さらにあまり声を上げて言っていませんがエンジンの気持ちよさも可能にしています。それが2代目NSXの『新しいスポーツカーの経験』でもあります。

ただ、2016モデルではそれを使いこなせていなかったのも事実です。そこで2019モデルでは『あくまでも自然に』という考え方で、人間の操作に対するクルマの動きのつながりに注力して開発をしました。そのためには制御の最適化だけではなく、基本性能も一緒に高めていく必要がありました」と語ってくれた。

2019モデルでのアップデートを総論すると、ハードウェアの能力を全方位でシッカリと引き出せるようになったイメージである。さらに言うと、「機械に血が通い始めた」と言えるかもしれない。このあたりは日産自動車「GT-R」(R35)やレクサス「F」の進化/熟成と同じ匂いを感じる部分だ。ただ、今回はその能力の一部を体感したにすぎず、可能ならサーキットのようなクローズドコースでテストをしてみたい。

装備面の乏しさが気になってしまった(筆者撮影)

走りの進化を感じた一方で、2000万円オーバーにもかかわらずあごすりを防ぐリフトアップ機構がないことや、電動格納式ドアミラーや安全支援システムがないこと、時代遅れの画面サイズのナビゲーションや使えないカップホルダーなど、装備面の乏しさが気になってしまった。このあたりは日本車が最も得意だった部分だと思うのだが……。こちらも早急に対応してほしいところである。

ちなみにホンダファンの多くはNSXタイプRの復活を期待していると思う。水上氏は「出す/出さないは置いておいて(笑)、スポーツハイブリッドSH-AWDをより活用したモデルにしたいですね」と話してくれた。

山本 シンヤ 自動車研究家

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やまもと しんや / Shinya Yamamoto

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“わかりやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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