それが2016年に登場した2代目NSXである。メカニズムはすべて刷新され、複合素材で構成されるスペースフレーム&ボディパネル、縦置きV6-3.5L直噴ツインターボエンジン+リアモーターとフロント左右独立モーターを組み合わせる「スポーツハイブリッドSH-AWD」、アルミサスペンション&磁性流体式のアクティブダンパー、電動サーボシステムのブレーキなどなど、新たな武器を数多く盛り込まれた。また、「LPL(開発責任者)はアメリカ人のテッド・クラウス氏」「アメリカのR&Dチーム主導で開発」「オハイオ工場で生産」と新しい試みも行われた。
筆者は500psオーバーのスーパースポーツながら、視界のよさや一般道での扱いやすさは初代のDNAをシッカリと受け継いでいると感じたが、複雑な制御を採用するがゆえにサーキットなどでのスポーツ走行時にドライバーの操作とクルマの動きがリンクせずドキッとするシーンもあり、ハード/ソフトともに熟成不足を感じたのも事実である。
ただ、それ以上に多くの人の評価は厳しかった。おそらくハードやソフトうんぬんだけでなく、シンプルで軽量がウリだった初代とのギャップが大きい2代目を受け入れたくない……という人も多かったのだろう。まさに初代NSXを素直に受け入れられなかった人と同じ感覚に近いのかもしれない。
初代NSXが掲げたコンセプトは今ではどのスーパースポーツも踏襲している。そこでホンダは2代目を開発するうえで「NSX=新しいスポーツカーの経験」のために従来の枠にとらわれない挑戦を行った。筆者はそれに関してはシッカリと評価すべきだと思っている。
2019モデルのポイントは目に見えない部分にある
そんな中、NSXが2019モデルにアップデートされた。エクステリアは小変更でフロントグリルのボディ同色化(従来はシルバー)と前後メッシュパーツやOPのカーボンパーツをグロス仕上げ(従来はマット仕上げ)に変更。ワイド&ローのたたずまいをより強調させるとともにスーパースポーツとしての質感をアップした。
ボディカラーは初代NSXで採用されたイモラオレンジ・パールを現代の技術を用いて刷新した新色「サーマルオレンジパール」を追加。インテリアは従来オプション(カーボンファイバーインテリアスポーツパッケージの一部)だったアルミ製スポーツペダル&フットレストの標準化とインテリアカラーに新色「インディゴ」が追加されている。
ここまでは一部改良でよくある意匠変更だが、2019モデルのポイントは目に見えない部分にある。実はLPL(開発責任者)はテッド・クラウス氏からダイナミック性能統括責任者/マイスターの水上聡氏に変更された。さらに開発もすべて日本サイドで行われ、徹底的に問題を洗い出したうえで、こだわりや領域を超えて行う“すり合わせ文化”を特徴とする日本の血がより色濃くなった。
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