日経平均は2019年半ば1万6000円もありうる 株価は戻っても底値はまだ確認できていない

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連銀の金融政策のよりどころは、実体経済と金融システムだ。先週末の雇用統計に示されたように、「まだ」アメリカの経済は強く、今すぐ利下げに転じる根拠はない。特に銀行の経営が破たんするなどの様子も全くなく、金融システムが動揺するとも思えない。とすれば、連銀は慎重ながらも、利上げ路線を継続せざるを得ない。

先週末は、パウエル議長が、先行きの利上げや量的緩和の縮小に柔軟な姿勢であることを語ったが、これは市場の動揺に対する口頭での配慮ではあったものの「利上げをやめることに決めた」と言ったわけではない。今後もデータを注意深く見て金融政策を判断する、という当然のことを述べたに過ぎない。今後の展開としては、アメリカの景気が現実に悪化し、今からそれまでに現水準から一段と大きく米株価が下落した「後で」、連銀が利下げに転じ、それが株価底入れの契機になる、という形を見込んでいる。

株価対策や消費増税の凍結の可能性はあるのか?

Q2)日本でも、株価下落を受けて、株価対策がすぐにでも打ち出されるのではないだろうか。

A)その可能性はほとんどない。期待しない方がよい。財務省、金融庁、日銀が、株価下落について会合を開き、意見交換したが、「今後も市場を注視する」ということ以上のものではないだろう。

国内景気の回復は極めて弱いが、経済指標は総じてみれば上向きで、景気回復感は薄いものの、景気が後退しているわけではない。また、株価対策を打つと言っても、具体的に何もできないだろう。消費増税に対しては、景気対策が打たれることにすでになっており(筆者自身は、その対策が有効かどうかの疑念を抱いてはいるが)、政府が今すぐさらなる景気刺激策の上乗せをする、ということは考えにくい。日銀の金融緩和も伸びきっているうえ、緩和の景気に対する刺激効果もかなり薄くなっていると推察される。これ以上の緩和は(総裁は可能だと言っているが)実質的に追加が難しく、仮に追加緩和したところで効果はほとんどないだろう。

Q3)消費増税がまた凍結されるのではないか?

A)その可能性はゼロではないが、かなり低いと予想している。今月からの通常国会では、消費税率引き上げを前提とした予算案が、国会で審議される。まだ国内景気が悪化に向かっているわけではなく、前述のように景気対策も立案されているため、政府・与党は現時点で、消費増税の凍結が必要だとは考えず、そのままの予算案が国会で可決するだろう。10月に消費税率を引き上げた後で、「消費増税の悪影響を打ち消すために、経済対策を発動し、それで大丈夫だと確信していたが、想定外に景気が悪化してしまった」と言うのだろうが。

Q4)馬渕さんは、今年アメリカの経済が悪化するため主要国の株価は底抜けし、それに対して日米とも株価対策・景気対策がすぐには打ち出されない、と主張しているが、株価が下落することがそんなに嬉しいのか?

A)私としても「世界経済が拡大し、結果として株価が上昇してくれた方がよい」と考えている。しかし景気は悪化することもあるし、株価が大きく下落することもある。株価下落が起こって欲しくないからといって株価上昇を祈っていてもしかたがない。専門家が、株価が上がるような見通しをいくら語っても、下落する時は下落する。重要なのは、客観的に株価下落が予想されるのなら、どういう投資行動をとるべきか、という点ではないだろうか。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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