今年の株式市場はバブルだった、といえる理由 いまから株を買っても、本当に儲かるのか?

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しかし、リスクに対する報酬と異なり、人気の波に乗るという儲け方では、持続的に利益が得られることは保証されない。上手く乗れば儲かるし、降りるのが遅れれば、大きな損失となるのだ。だから、教科書に載せるわけにはいかない。理論的な儲けのメカニズムとは言えないからだ。

現実におきていることは、教科書では説明できない

ところが、やっかいなのは、現実の株式投資の儲けは、リスクの報酬としてのリターンではなく、波に乗ったことによるものがほとんどであるからだ。これは、実証研究の結果とも整合的である。日本だけでなく、世界中で見られる現象だが、いわゆる大型株、時価総額の大きな株式(日経225を構成する銘柄など)は、「株価の変動は大きく、一方でリターンは低い」という現象が長年、特に2000年以降の近年に顕著に見られる。変動こそがリスクであるから、大型株は「ハイリスク、ローリターン」なのである。

これは教科書理論では説明できない。この解釈は、株式投資家はギャンブル好きで、株価の変動に賭けるギャンブルを楽しんでいる分、リターンが低くても満足しているというのがひとつの可能性。もうひとつの可能性は、大型株で儲けるには、変動の波に乗って上手く儲けるしかない、ということで、みなそれを狙って大型株に投資しているということだ。この二つの解釈はお互いに同時に成立しうるが、後者の解釈を推し進めると、ボラティリティ、変動とは儲けのチャンスを含むものであり、それを入手するためにみな対価を払っているということだ。

したがって、今年の上昇トレンドの中での5月から6月の乱高下、8月と足元の乱高下は、株式投資家が喜ぶ、またとないタイミングなのである。大きなトレンドに乗ることと、乱高下の激しい波に乗ることも、本質的には同じことで、ブームの流れを読むことによって儲ける手法なのだ。

これは、別名バブルである。したがって、株価水準に関係なく、今年の株式相場は一貫してバブルなのであり、今年儲けた人々は、うまくバブルの波に乗った人々なのである。
問題は、大きなバブルの波だとすると、それがいつまで続くか、いつ崩れ始めるか、ということであるが、それはまた次回議論することにしよう。

小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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