全国100局、飽和する「ラジオ」は生き残れるか 「規制」で生き延びてきた業界が直面する課題

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ラジオ聴取習慣率のトップ5常連である岩手県のラジオ局・エフエム岩手の村田憲正最高顧問も「地元企業の広告収入や自治体からの制作費で番組を作っている。そのため、若者が居なくなり地域の元気がなくなれば、当然影響が出る」と嘆く。

エフエム岩手の地元・岩手県はラジオがよく聴かれている県として知られているが・・・(写真:エフエム岩手)

また、あるラジオ局OBは「ラジオ局は広告収入が先細りしていく中でも、規制により潰れないよう保護されてきてしまった」と、この状況が起こった必然を指摘する。

一般的なラジオ局が用いる周波数帯の電波で番組を放送するには条件がある。総務省が所管する電波法に基づき、放送局の免許を取得しなければならないのだ。免許申請には、地域社会特有の要望を充足することや、人材・資本面で地域社会に結合することといった基準を満たす必要がある。

規制によって延命されてきた地方局

これ以上に強固な規制となっているのが、各ラジオ局の放送地域を限定するという放送法の制度だ。これは特定地域の情報などに各局の放送内容が偏り、地元の情報が得にくいという状況を防ぐためのものである。

首都圏、関西圏、中京圏には3都府県以上への放送が許されている広域局も存在するが、ほとんどのラジオ局は限られた地域・県域内でのみ放送を許可されている。さらに1988年に告示された「基幹放送普及計画」において、各都道府県におけるラジオ局の目標設置数がAM・FM局それぞれ1局もしくは2局ずつに定められ、この数が事実上の参入規制となってきた。

とはいえ、特定の放送局が複数の放送局を買収してしまっては、地域性だけでなく報道の多元性も危ぶまれる。そのため、「マスメディア集中排除原則」と呼ばれる規制も定められている。こちらは前述のラ・テ兼営のようなラジオ・テレビの1局ずつをのぞき、原則として1つの企業が2つ以上の放送事業者を所有できないようにし、放送の寡占・独占を防ぐ役割を果たしてきた。

一見、行政が健全に管理しているようにもみえるが、前出のラジオ局OBは「規制に保護されてきた中で、はたしてどれだけのラジオ局が競争にさらされても負けない番組作りをしてきたと胸を張れるのか」と、各局の番組制作力に疑問を呈する。エフエム岩手の村田氏も「キー局の人気番組を流していれば楽に儲かる時代があった」と認める。

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