全国100局、飽和する「ラジオ」は生き残れるか 「規制」で生き延びてきた業界が直面する課題

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ラジコが電通を旗振り役に作られた過程についても、「ラジオ局が主導してこのようなサービスを開発するべきだった」(ラジオ局OB)。ラジオ局がラジコを通して番組を放送するためには、電通が筆頭株主のラジコ社に月額制で放送料金を支払う必要がある。

TBSラジオが番組制作の指標とするラジコの聴取データも、放送料金の支払いに付帯するオプションだ。もし、各局が自らラジコのようなサービスを作ることができれば、おカネを払うことなく聴取データを取得し、番組制作に生かすことができたのだ。

とはいえ、埼玉県のラジオ局・エフエムナックファイブ(NACK5)の高津康文取締役メディア部長は「全国に放送網を張り巡らす首都圏キー局にしか、そんな体力は残っていない」と漏らす。ほかのラジオ局関係者からは「本来、業界のインターネットへの移行を先導するべきであったキー局が、真剣に生き残り策を考えてこなかった結果だ」と厳しい声も挙がる。

生き残りの道は本当にあるのか

地域メディアについて研究する京都産業大学の脇浜紀子教授は「この先、ラジオ放送だけでのマネタイズは、多くの局で難しくなるのでは」と分析する。

前出のOBは「近い将来、放送法が改正されてマスメディア集中排除原則が撤廃されることも考えられる。そうなると、マネタイズの前提となるビッグデータを握る電通やIT企業などによる放送局のM&Aが動き出すのでは」と語る。マスメディア集中排除原則は実際に緩和されつつあり、これによって放送コンテンツの競争力を向上させるという議論が盛んに行われている。

また脇浜氏も、マスメディア集中排除原則がなくなると仮定すれば、「米国で前例のある地域のラジオ同士や新聞、テレビといった他媒体との合併により、多角発信型メディアの一角を担うべき」と指摘する。

米国で普及し始めた「地域からの寄付金」による運営を模索するのも一手だという。ラジオはリスナーのハガキやメールがあって成り立つ特殊なメディアであり、「日本で寄付は浸透しないという声もあるが、ラジオならば可能性がある」(脇浜氏)。

ただ、前出の地方ラジオ局役員は「現在多くのラジオ局に新聞社が出資している。今となっては隙あらば資本を引き上げたいはずだが、実現していない。地方ラジオ局を買収したい企業などいないという証拠だ。ましてや、地方のラジオ、テレビ、新聞がくっつくなんて、どれも沈んでいくメディアの延命に過ぎない」と一蹴する。

今年5月、約30年続いた「平成」の時代が終わる。次の元号が終わる頃には、はたしてどれだけのラジオ局が名前を残しているだろうか。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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