全国100局、飽和する「ラジオ」は生き残れるか 「規制」で生き延びてきた業界が直面する課題

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実は、大手広告代理店・電通の統計によれば、マスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)全体の広告費が3年連続で減少する中、ラジオ広告費だけは2年連続でわずかながらプラス成長となった。

その要因として、ラジコのスマホアプリの利用者数が着実に増えていることや、ラジオ局を指定して話しかけるだけで簡単にラジオを聴ける「スマートスピーカー」の登場による期待感が挙げられる。

とはいえ、ぬか喜びはしていられない。実際、近年は“声のブログ”とも呼ばれる新興ボイスメディア「Voicy(ボイシー)」や、書籍の読み上げサービス「audiobook.jp(オーディオブック・ドット・ジェーピー)」といったさまざまな音声メディアが立ち上がっている。音声を巡る新たな“覇権”争いが過熱しつつある。

地方ラジオ局を取り巻く厳しい現状

ラジオ業界でそうした変化の波にうまく乗れるのは、首都圏のキー局ぐらいだとの声もある。「老舗のキー局は古き良き時代から保有している有価証券などの金融資産が多いので、しばらくはしのげるだろう。だが、地方局はそうはいかない」(地方ラジオ局役員)。

総務省の統計によれば、日本全国には100局もの民間ラジオ局が存在する(2018年3月末時点、コミュニティ放送局を除く)。そのうち、いまだに存在感が強いテレビ局との兼営(ラ・テ兼営)が3割超で、残りの7割弱がラジオ単営の放送局だ。地方の単営局は経営環境が厳しいと言わざるを得ない。

年1回調査が行われる都道府県別ラジオ聴取習慣率は、地方の県が上位に並ぶことが多い。ラジオの聴取習慣率には自動車移動の長さや、ラジオに親しみの深い高齢者の割合が関係する。ただ、いくら「率」が高くても、若者が地域を去り過疎化が進めば人口の母数が減り、地域に根を張る地方局の広告価値は落ちてしまう。

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