全国100局、飽和する「ラジオ」は生き残れるか 「規制」で生き延びてきた業界が直面する課題
そこで、TBSラジオは思い切って2017年11月末に野球中継から撤退することを発表。2018年4月から野球中継を放送してきた平日夜18~21時の時間帯で、『アフター6ジャンクション』というカルチャー番組をスタートさせた。ヒップホップグループ「RHYMESTER」のメンバー・宇多丸さんと、日替わりで人気アナウンサーが出演し、若手リスナー獲得に向け攻勢をかけている。
もう1つの変化が、「スペシャルウィーク」の廃止だ。スペシャルウィークとは、調査会社ビデオリサーチによる聴取率の調査週間にあわせて、各番組で豪華なゲストや企画、プレゼントなどを用意する週を指す。ラジオ聴取率の調査は毎日数字がわかるテレビの視聴率と異なり、2カ月に1回だけ行われる。呼称こそさまざまだが、これまで聴取率の調査週間は各局が特別な企画を打ち出し、しのぎを削ってきた。
聴取率は前述の通り、TBSラジオが首都圏で圧倒的な強さを誇る。にもかかわらず、TBSラジオは2018年12月から聴取率の調査週間に、スペシャルウィークを開催しない。
「ラジコ」が変えた業界の慣習
背景には、ラジオ番組をネット上で同時配信するサービス「radiko.jp(ラジコ・ドット・ジェーピー)」によって、リスナーに関する情報をより精緻に把握できるようになっており、2カ月に1回の調査を重視する必要がなくなってきている現状がある。
TBSラジオの三村孝成社長は昨年11月の記者会見で、「これまでは聴取率を目当てに番組作りをしてきたが、聴取率争いが媒体価値向上に結びついていない」と語り、今後の番組制作の指標をラジコのデータに切り替えることを明らかにした。
このようにTBSラジオは業界各社が変えたいと思っていても変えられなかった慣習に、次々とメスを入れている。その背景には、変化のラストチャンスとも言える音声メディアの近況がある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら