31歳、ゼロからやり直す「巨人ドラ1」の進む道 大阪桐蔭のエース・辻内崇伸と女子プロ野球
仕事は決して楽ではなかったが、大きな励みになったのは、やはり家族だった。疲れて帰ってきても、娘の顔を見れば「明日も頑張ろう」という気持ちになれた。
「それだけに今年の9月から妻と娘が秋田にある妻の実家に戻ったのは寂しかったですね。別居とかではなく、家庭の事情があって先に秋田に行ってもらったんです。仕事を終えて家に帰っても誰もいないというのは寂しかったですが、疲れているのですぐに寝て、すぐ朝が来て1日が始まる。そんな感じでした。来年5歳になる娘とは12月初旬に久しぶりに会ったのですが、またすごく成長していました。もう赤ちゃんではなく、女の子になっていましたね」
気になる今後については、どんなビジョンを頭に描いているのか。巨人を戦力外になった直後は「野球とは違う世界も見てみたい」として、不動産関係の会社に勤める方向で話を進めていた時期もあったが……。
「当時はケガで苦しんだこともあって、たしかに野球から離れたいと思っていました。だから、こうやって女子プロ野球で教えることになるとは想像もしていませんでした。でも、今思えば、あのときは野球でしんどい思いをして、不貞腐れていましたね(笑)」
最終的には奥さんの「野球に携われるならやってみたら」との後押しも受け、セカンドキャリアに女子プロ野球を選んだわけだが、その決断について問うと、辻内は前を見据えてから言葉を繋いだ。
辻内が描く「サードキャリア」
「本当にいい方向に進めていると思います。この仕事だからこそ、5年間でいろいろな方に数多く出会えた。あそこで野球を諦めて普通の仕事に就いていたら、それらの出会いはなかった。ただ、もっと勉強や経験を積んでから、また指導者になりたいという思いはありますが、次も野球に携わる仕事に絞っているかといったらそうではないです。一般の企業に勤めているかもしれません。それも自分の糧になるはずですから。
住所も秋田に移しますが、だからといって、秋田で働くとか、終着駅だとも決めていません。妻も娘もいますからゆっくりするつもりはないですが、人生は1度きりなので妻と、妻のご両親ともしっかり話し合って次を決めるつもりです。どんな仕事をするにしても、この5年間で得たものを無駄にせず、サードキャリアに向かいたいです」
まだ31歳。すべての経験を肥やしに変えながら、前に進んでいくつもりだ。
(敬称略、文:鷲崎 文彦/スポーツライター)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら