問題だらけで年越し「中東」は2019年も危うい サウジもシリアも問題は片付いていない
サウジアラビアなどの湾岸諸国とイスラエルが関係を深めているのは、イランが援護したアサド政権がシリア内戦でスンニ派反体制派に事実上の勝利を収め、イランがシリアで地歩を築いたことがある。イランの台頭を食い止めるためにスンニ派に肩入れした湾岸諸国は手駒を失い、頼る形になっているのは強力な航空戦力を持つイスラエルだ。
イランは、レバノンのシーア派武装組織ヒズボラにシリア経由で武器を供与しており、警戒を強めるイスラエルは、シリアにあるイランの拠点を繰り返し攻撃している。シリア内戦では、イスラエルと湾岸諸国の利害が一致しているのだ。
イスラエルによるシリア攻撃は続きそう
イランは、ヒズボラにロケット弾などの兵器を供与するのにとどまらず、ロケット弾やミサイルの製造設備やその技術を移転しようと試みているとされる。これを「レッドライン」とするイスラエルとヒズボラは2006年に戦火を交えており、毎年のようにレバノン紛争が再燃しかねないと言われてきた。
2018年には、イランの無人機がシリアからイスラエル領空内に侵入、撃墜される事件も起きた。イスラエルは報復でシリア領内の複数のイラン関連施設を攻撃したが、シリア軍も反撃してイスラエル軍機1機が撃墜された。
2019年もイラン関連施設を標的としたイスラエルによるシリア攻撃が繰り返される公算が大きく、ヒズボラも巻き込んだ形で戦火が拡大するとの予想もある。最悪の場合、イスラエルが直接、イラン本土の核施設や軍事施設を攻撃する戦争に発展しかねない。
終息に向かいつつあるシリア内戦は、トランプ大統領がアメリカ軍の撤収を表明したことで、混乱が再燃する懸念が出てきた。マティス国防長官や、IS掃討戦で有志連合の調整を担ってきたマクガーク大統領特使がシリア撤収に反対して相次いで辞任を表明し、トランプ政権内の亀裂が露呈した。イラクとシリアにまたがってカリフ制国家の樹立を宣言したISの残党が再結集しかねず、軽率だとしてトランプ大統領に批判の矛先が向かっている。
シリア北部に駐留するアメリカ兵は約2000人にすぎないが、撤収の影響は大きい。というのも、IS掃討戦は、クルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」(SDF)にアメリカ軍が武器を供与するなどして進められてきた。トルコは、シリアのクルド人勢力をトルコ国内のクルド人分離独立派と同一視して「テロリストだ」と非難し、アメリカに支援の停止を求めてきた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら