問題だらけで年越し「中東」は2019年も危うい サウジもシリアも問題は片付いていない

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ただし、イランはホルムズ海峡に機雷を敷設したり、多数保有する高速小型艇でホルムズ海峡を航行するタンカーに攻撃を加えたりして、海峡を一時的に封鎖する能力がある。

アメリカは現在、イラン産原油の輸出を全面的には禁止せず、適用除外を認め、中国などへの密輸も続けられている。トランプ政権が資金源封じを強めれば、追い詰められたイランが再びホルムズ海峡の封鎖を示唆して緊張が高まるのは必至だ。

サウジアラビアはムハンマド皇太子次第

中東での覇権をイランと争うサウジアラビアは、隣国イエメンでイランの影響下にあるイスラム教シーア派系フーシ派の弾道ミサイル発射の脅威を受けており、イエメンを舞台にした代理戦争での敗北は許されない。

だが、「世界最悪の人道危機」となったイエメン紛争に軍事介入したサウジアラビアへの批判が高まり、カショギ氏殺害事件を契機に同盟国であるアメリカからの圧力も強まった。ムハンマド皇太子の権力基盤が揺らぐ中、これまでのような強硬策は続けにくくなっている。

サウジアラビアは「敵の敵は味方」という論理で、中東最強の軍を持つイスラエルに接近し、イランやイエメンに関する軍事情報や技術の入手を試みている。カショギ氏殺害事件でも、イスラエルの企業NSOグループが開発した「ペガサス」というスパイウェアがサウジアラビア政府に販売され、カショギ氏の殺害につながる一つの要因になった可能性があると友人は訴えている。

2018年には、ネタニヤフ首相が国交のないオマーンを訪問するなどイスラエルと湾岸諸国の関係改善が進んだものの、ムハンマド皇太子の政治基盤が揺らいだことで関係改善の流れに急ブレーキが掛かった。

皇太子がカショギ氏殺害事件の危機を乗り越えられれば、イランの脅威に対抗したイスラエルとの水面下の同盟関係が深まる可能性がある。石油収入に依存するサウジアラビアは、1バレル=80ドル程度が原油価格の適正水準とみる。現在のような水準は財政的に厳しい。原油価格の動向もサウジアラビアをめぐる情勢に影響を与えよう。

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