ストリート系「AMBUSH」世界で注目される理由 VERBAL氏が語るファッション業界の今
――AMBUSHだけでなく、渋谷・原宿・表参道界隈のストリートブランド店にはたびたび行列が発生していて、それがブランド価値を高めることにつながっている印象があります。行列が作るブランド力というのでしょうか。
今までだと、行列ができるショップは商品を転売されると思って嫌がるじゃないですか。でも転売市場がブランドのバリュエーション(評価)を高めているとも言えると思うんです。100ドルの商品が500ドルで転売されると、その時点で商品の価値が変わる。例えば最近みんな、希少価値のあるスニーカーを転売サイトで買うようになっていますけれど、そういうサイトでは商品の価格は株価のように値付けされています。
――販路としてはインターネット通販(EC)が強くなる中で、リアルの店舗の価値はどこにあると感じていますか。
ECはどちらかというと、ファストファッションのブランドが強いですよね。安くて失敗してもリスクが低いから、ポンポン買う。ですが、僕たちの商品のようにミッドレンジからハイレンジの価格帯の場合、「なぜこれが数万円もするのか」と腑に落ちない人もいる。そういう人には、ショップで商品を見せたほうが「すごくいいから、この値段なんだ」と納得していただける。フィジカルな要素が大事です。
本当はECもリアルも両方できるのがいいと思います。11月にアマゾンとのコラボレーションでポップアップストアを出しましたが、アレクサ(アマゾンのAIアシスタント)を店員代わりにするというコンセプトでした。デジタルとフィジカルを合わせた体験のほうが楽しいんじゃないかと感じています。
ハイブランドとストリートカルチャーの融合
――AMBUSHのようなストリートカルチャーのブランドが今、ファッションの主流です。ディオールだけでなく、欧州の老舗ハイブランドがどんどんストリートのテイストを取り入れていますよね。
この4~5年で、ストリートとハイブランドの融合が世界的に当たり前となりました。融合なんてできるのかと誰もが半信半疑でしたが、インターネット誕生以降のミレニアル世代の若い子たちにとっては、「当たり前でしょ」というイメージです。
1990年代から、ハイブランドはストリートの要素をデザインに取り入れてきましたが、本格的なシフトはストリートのデザイナーたちを起用し始めてから起こりました。今年は仏ルイ・ヴィトンがOFF-WHITE(アメリカのストリートブランド)のヴァージル・アブローをアートディレクターに起用したことが、ファッション界のビッグニュースになりました。
この起用は、彼の前にルイ・ヴィトンが招いた英国のデザイナー、キム・ジョーンズの影響が大きいと思います。彼が来てから、ルイ・ヴィトンのメンズウェアの売り上げがいきなりボーンと跳ねたんですよ。これでルイ・ヴィトンがストリートとの融合に手応えを感じたのだと思います。
特にルイ・ヴィトンが2017年に、アメリカのSupreme(シュプリーム)とコラボレーションしたのは、究極のコラボでした。ストリートに対する期待を一気に高めたと思います。
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