ストリート系「AMBUSH」世界で注目される理由 VERBAL氏が語るファッション業界の今

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僕なんてラッパーですから。ファッションブランドを始めたものの、デザイン学校も出ていないですし、ファッション業界の常識もなかった。パリコレクションの時期さえ知らなかったぐらいです。でも「海外に発送するにはどうしたらいいの?」なんてことに悩みつつ、痛い目にも遭いながら徐々に知見を蓄積してきました。だからおっしゃるとおりで、ものを作るという1つのポイントから、必要なスキルを増やしている感じです。

――一方で現代はコンテンツの消費速度が早く、すぐ埋没してしまいがちです。この時代にクリエーティブの領域で勝ち続けるために、どういうことを心がけていますか。

情熱、パッションしかないです。自分がやっていることに愛がないと。「ファッションってかっこいいから、ちょっとやってみようかな」という気持ちなら、すぐ食われちゃうからやめたほうがいい。

AMBUSHも楽なときなんてなかったですよ。YOONは立ち上げ当初からずっと同じ理想を語り続けて、高い基準を目指してきました。僕は「そんなの、今のうちらじゃ無理だよ」と思っていたのですが、頑張っていたらいつの間にかディオールに起用されるまでになった。継続は力なりで、続けていれば人生でこんなことが起こるんだなって、最近、思う次第です。

こういう過程で僕が学んだのは、さっき話したランゲージ、共通言語をうまく使うこと。頭の中にあるものを、そのまま誰かにテレパシーみたいにわかってもらうって無理じゃないですか。だからたとえば色だったらパントーン(世界で使われている色見本)で伝える。赤っていっても何千通りもあるから、どの赤なのかパントーンで指定する、といった感じです。

――ビジネスで最もランゲージが求められるのは企画の提案だと思いますが、VERBALさんはどんな企画書を作るのですか。

僕は企画書は「目次」だと思っています。今まで見てきた中でエキサイティングだと思う企画書は、「動員数200万人」といった要点だけがキャッチーにまとまっているもの。なぜ200万人なのか、どうやって集めるのか、といった説明はいらないと思うんです。相手に「それってすごく面白そう、もっと教えてよ」と言わせる企画書じゃないと伝わらない。だから文字が多い企画書は絶対やめたほうがいいですね。

アーティストがビジネスパーソンになる

――音楽とファッションでの成功を経て、2年前からエンターテイメント企業のLDHで執行役員として経営に携わっています。

何年も前からHIROさん(五十嵐広行会長、創業者)と付き合いがあったのですが、執行役員としては海外展開を集中してやっています。LDHがほかの日本企業と大きく異なるのは、アーティスト自身がビジネスパーソンとして海外のアーティストと話せるので、交渉が早く進むことですね。

僕は海外の人に「HIROさんってどんな人」と聞かれると、「ジャパニーズ・パフ・ダディ」って説明するんです。パフ・ダディはアメリカのヒップホップミュージシャンで、個人資産が800億円以上と言われていて、毎年、米フォーブス誌の長者番付に載るような人です。音楽に加えてアパレルを手がけ、最近ではシロックというウォッカブランドでも成功している実業家です。

彼のようにアーティストである強みを十二分に発揮してトップダウンでビジネスをすることは、ヒップホップだけでなくロックンロールのアーティストにも増えています。LDHもトップがクリエーターでもありプロデューサーでもあるので、突破する速度が圧倒的に速いのです。

ジェイ・コウガミ デジタル音楽ジャーナリスト

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世界の音楽ビジネスとテクノロジーに特化したニュースメディア『All Digital Music』編集長。ギズモード・ジャパン副編集長を経て独立。世界の音楽業界やコンテンツビジネス、業界動向に関するリサーチから、アーティストや経営者、起業家へのインタビューまで、グローバルなビジネス視点の取材を国内外で数多く行っている。エンタテインメントにフォーカスしたテクノロジーメディア会社CuePointを設立し、音楽企業やIT企業向けに市場分析や新規事業に関するコンサルティングも行う。リアルサウンド、オリコン、WIRED.jpなど多数メディアで執筆。

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