ストリート系「AMBUSH」世界で注目される理由 VERBAL氏が語るファッション業界の今
――Supremeといえば昨年、米投資ファンドのカーライル・グループが約5億ドル(560億円)を出資したというニュースがありました。その際の企業価値評価額は約10億ドル(1120億円)だと伝えられていますから、Supremeはいわゆるユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場企業)なんですね。
ファッション業界ではずっとSupremeについて、「今後どうするのか?」と注目されていました。上場の噂もありました。ですから、カーライルの投資には「だよね」と納得する人も多いのではないでしょうか。
――「だよね」なんですか? 半導体メーカーに投資していたような投資ファンドが、ストリートブランドに商機を見いだすのはかなり意外でした。
僕は頭のいい、スマートな決断だと思いましたよ。カーライルという投資会社がSupremeをポートフォリオに持つことで、ビジネスの幅が広がると思うから。「どんなことやってんの?」というときに、「半導体のこういう製品を……」と言うよりも、「Supremeです」って言うほうがわかりやすい。もちろん、若い人たちにも断然アピールできます。
――それにしても、1000億円超の評価額は高すぎませんか?
例えば、世界で有名なある音楽グループについては、アーティストの価値だけで1700億円ぐらいあるって言われています。会社にして株式市場に上場するという話もあるぐらい。こういう強い価値があると、IP(知的財産)になったり、メディアにできたり、いろんなものに取り組んでいける。ビジネス界は今、エンタメやファッションのようなものにフォーカスがあるんだと思っています。
大企業は今、若い人と話すためのランゲージ、つまり共通言語を持てていません。これからどんどんミレニアル世代(1980~1990年代前半生まれの世代)やZ世代(1990年代後半~2010年ごろ生まれの世代)にリーチしないといけない中、ストリートというのはそのランゲージを作るための媒介なんです。
手前みそながらディオールもYOONを起用することで、若い世代・女性・アジア人という要素が交じわって、新しい角度からブランドを見てもらえるのではないでしょうか。若いデザイナーに対してもすごく大きなチャンスが生まれていますので、お互いがウィンウィンの関係なんです。
今は完全に「コンテンツありき」
――VERBALさん自身も、米ヴォーグ誌のニューヨークでのイベントに登壇していました。
コンデナスト(ヴォーグの出版社)って、すごい歴史のある会社。レジェンドな人がいっぱい関係している由緒正しいメディアです。それでも、若い人にうまく刺さっていないという悩みがあるそうです。そもそもミレニアル世代やZ世代って、紙媒体を買わないし。これからどんどん若い世代にもリーチしなければというところで、僕も若いデザイナーたちと一緒に、まさにストリートとラグジュアリーに関するセッションで登壇しました。
――ファッションに限らずビジネス界全体としてみると、従来は会計のような標準的なスキルをしっかり身に付けた人がスタープレーヤーでした。いわゆる「プロ経営者」はその典型です。でも今、世界では、センスやコンテンツを持っている人のほうが活躍できるのでしょうか?
今は完全にコンテンツありきですね。そして今後、AIがさらに進化していくと、最終的に人間の存在価値はコンテンツとクリエーティビティーしかなくなります。これまでやってきたような雑多な作業は、全部AIに任せちゃえばいい。人間にしかできないことはユニークな発想と、感情を持ったうえでのクリエーティビティーです。
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