結局、人間はどうすれば「痩せられる」のか 激やせしてもリバウンドする人は少なくない
この治療法は「肥満手術」と呼ばれ、要するに胃を劇的に小さくする手術だ(腸のバイパス手術を同時に行う場合もある)。大抵の人では大幅に体重が減るが、過体重もしくは肥満の状態が続く人も少なくない。
それでも手術後は大抵、健康状態に改善が見られる。糖尿病の患者ではインシュリンの投与が不要になるケースが多いし、コレステロール値や血圧が下がることも多い。睡眠時無呼吸症候群も消えてなくなるし、腰や臀部、ひざの痛みも治る。
いまだに残る「ダイエット根性論」
だが肥満手術の恩恵を得られるかもしれない人々すべてに手術を受けさせるには、専門医も対応する医療機関も足りないとミシガン大学栄養研究センター長のランディ・シーリーは言う。
また患者や医師の中には、本気になりさえすればやせることも、やせた状態を維持することもできるはずだという考えに固執する人が少なくない。あらゆる証拠が逆を指し示しているにもかかわらず、だ。
ロックフェラー大学の臨床研究者ジュールズ・ハーシュらが行った実験は、昔ながらのダイエットに対する科学の厳しい審判と言えた。ハーシュは肥満の人々を病院に入院させ、正常体重に戻るまで1日600キロカロリーの流動食で過ごさせた。
被験者らは平均して45キロの体重減を実現し、大喜びで退院していった。ところが体重はすぐにまた増えてしまった。
ハーシュとルディ・ライベル(現・コロンビア大学)は同じ実験を何度も繰り返したが、結果は同じだった。最終的に2人は、非常に太った人々が食事を減らして体重を正常値まで下げると、飢餓に陥った人と同じような心理状態になり、想像を絶するくらい激しく食べ物を欲してしまうということを発見した。
ところがこの「教訓」は一般には浸透しなかった。ほんの2〜3年前のこと、テレビのダイエットコンテスト番組の参加者を対象にアメリカ国立糖尿病・消化器・腎臓疾患研究所のケビン・ホール上級研究員が行った研究は大きな話題となった。参加者の体重は大きく減ったものの、そのままの体重を維持できた人はほとんどいなかったのだ。