結局、人間はどうすれば「痩せられる」のか 激やせしてもリバウンドする人は少なくない
1980年代、体重は身長と同じくらいに親から子へと遺伝することが複数の研究で明らかになり、肥満と遺伝子の関係がはっきりと示された。幼い頃に養子に出された子どもたちも、体重に関しては生物学上の親に似る。別々に育てられた双子であっても、体重もほぼ同じ水準になる。
肥満の当事者にとっては望みが消えゆく時代だった。
レプチン投与という治療法を考えつくが
1995年にはロックフェラー大学のジェフリー・フリードマンが糖尿病にとってのインシュリンによく似た物質を発見。レプチンと名付けられたこの分子は脂肪細胞から分泌され、どのくらいの脂肪が体についているかを脳に知らせる役目を担っている。
レプチンは脳内にある制御装置に信号を送る。脳が考える適正体重よりもその人がやせているようなら、脳は食べるよう指令を出す。
ところが肥満の人の場合には適正体重が通常より高く設定されている。おかげで脳は、太った状態が続くように指令を出してしまうのだ。
製薬会社アムジェンは、肥満治療薬を開発するつもりでロックフェラー大学とフリードマンから2000万ドルでレプチンの権利を買い取った。肥満体の患者にレプチンを注射すれば、体内の脂肪が多すぎると脳が考えるのではないかという発想からだった。
もしレプチン投与がうまく機能すれば、患者の食欲は落ちて体重も減るはずだ。レプチンの投与量を加減することで、医師が患者の体重を細かくコントロールできるようになるかもしれない。
だが悲しいかな、レプチン薬の開発はうまくいかなかった。レプチンを注射しても体重減という反応を示した人はほとんどいなかったのだ。それでもレプチンは、ホルモンと体重をつかさどる脳の信号との複雑なネットワークを解明するカギだった。
問題は、特定の物質だけをターゲットにしても体重減にはそれほどつながらないということだ。