「勘と経験」バカにする人が見逃す仕事の本質

デキる人は「論理」だけでは動かない

サイクルベースあさひのSPAモデル

私がよく事例で取り上げる自転車販売店のサイクルベースあさひも、後から振り返ると、ファッション業界でGAPやユニクロが導入して成功した製造小売り(SPA)というビジネスモデルを自転車業界に持ち込んだのが、成功のカギになっている。

というのは、それまでの自転車販売店は売るのが専門で、アフターサービスに力を入れていなかったし、ましてや自社でプライベートブランド(PB)を製造して販売するというのは一部の大型量販店を除けば例がなかった。そうした中で、あさひは顧客接点を軸として、アフターサービスを充実させていった。

あさひは「故障したら買い替えしてしまう」という風潮があったバブル時代でも修理に力を入れ、他の店で購入した自転車の修理も受け入れていた。現在のあさひのホームページは、メンテナンスやカスタマイズの方法の解説が充実している。出張修理をしているほどの力の入れようである。

アフターサービスに力を入れ、商品販売時の顧客ニーズを吸い上げて商品開発に生かした。さらには、中国の高級自転車製造工場に直に乗り込んで、デザインの指導や品質管理まで行う。まさに、GAPやユニクロがファッション業界で行ったSPAモデルを自転車販売店で実践した点で実に理にかなっている。

しかしながら、同社の創業者、下田進氏が最初からこのSPAモデルを志向していたかと言えば、それはありえない。SPAの実現にはかなりの売上規模が必要だからだ。自転車小売店を始めたもののなかなか顧客がつかない段階で、仕方がなく、他の販売店では力を入れていなかった修理やアフターサービスを充実させた。そこで満足した顧客にやがて新車を買ってもらえるようになったというのが真実であろう。

そうこうしているうちに、多店舗展開するようになり、結果として効率的な店舗経営のためのノウハウもたまった。やがてPBを製造できるような規模にまで大きくなっていった。すべて下田氏やスタッフが日々の仕事の中で苦労して見つけたり、つくり上げてきたりしたノウハウだ。

そのように考えると、最初は下田氏が日々、その場その場で悩んだ末に試行錯誤の結果、考え出した方法が、振り返ってみると理にかなっていたと見るほうが適切であろう。

直感や思いつきを後から理論武装

これらの2つの例は、もともとロジカルに徹底的に分析し尽くしたうえで実行に移したわけではない事業やオペレーションが、気がついたら理論的にも正しい事業へ変身していたということである。

別の言い方をすれば、直感や経験から気づいたこと、感じたこと、つまり右脳的なことを、後からきちんと理屈づけた、すなわち左脳で理論武装したとも言える。実はサラリーマン経営者や経営幹部にもこうした人がそれなりの割合でいる。

私の経験から見れば、仕事ができるビジネスパーソンは多かれ少なかれ、勘を上手に使っている。

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