「勘と経験」バカにする人が見逃す仕事の本質

デキる人は「論理」だけでは動かない

なぜかと言えば、私や息子のやり方は安全で正しいかもしれないが、そこには学習や進化はない。リスクは少ないかもしれないが、消費期限という判断基準がはっきり示されている以上、さらに踏み込んで考えたり、試してみたりすることはない。もっと言えば、「思考停止」が起きている。

それに対して、妻や娘のやり方は、非合理的に見えるかもしれないが、そこには学習があり、たとえ消費期限が切れていても大丈夫なことが多いとか、これ以上はやはり「危ない」「まずい」とか身をもって体験する。経験、あるいは体験を基にした勘で判断したりしている。

もちろん、時には痛い目に遭って、おなかを壊すことがあるかもしれない。しかし、自分なりの判断基準をもつことができるし、消費期限が書いていない場合や、書いてある部分を捨ててしまったという場合にも、対応できるだろう。

私や息子のやり方では、未知のものと遭遇した場合に、自分自身の物差し、すなわち判断基準をもたないために対応しようがないのである。どうも仕事でも同じことが言えるのではないか。

教科書に書かれている知識では不十分

企業で仕事をしていて、よいアイデアを思いついたとき、そのアイデアをそのまま口にすると「何を根拠にそんなことを言うのだ」と詰められたり、逆にある企画に対して「なんかおかしいな」と感じても理屈が立たずに声を上げられなかったりという経験があるだろう。

こうした状況に陥ったときに、推奨されている解決策は次のようなことである。

大事なことは物事を論理的に考え、できれば数字などのデータで証拠を見せたうえで、筋道立てて説明する。特にコンサルティングの仕事をしていると、論理的な見方・考え方、そしてデータや統計などの数字を示す説得の方法を徹底的にたたき込まれる。

20年以上、ボストン コンサルティング グループ(BCG)に在籍し、日本代表を務めた経験もある私は「たたき込まれた側」でもあるし、「たたき込んだ側」でもあるので、このことは身に染みてわかっている。

たとえば、ある事業の戦略を立てる場合には、まず市場を見て、そこにどのような事業機会(チャンス)と脅威(リスク)があるのかをできるだけ定量化する。次に競争相手が誰で、その実力、あるいは脅威がどの程度のものかをできるだけ定量的に、少なくとも必要な項目を評価する。最後に自社の経営資源を評価し、これらを総合的に判断して、事業戦略を策定するということになる。

こうした分析を行う際には、たとえばビジネススクールで学ぶようなマーケティング分析手法、財務分析、人材活用・組織改革の方法論などが必要とされる。

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