アメリカ経済を象徴する「IT産業」の現在地 圧倒的優位性がなくなり熾烈な競争に

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CPUでインテルを追うのがアドバンスト・マイクロ・デバイシズ(AMD)。パソコンのCPUのほかゲーム機器向けの画像処理半導体(GPU)を手掛けており、グラフィックス機能を持つAPUの開発にも注力している。GPUで急成長を見せているのがエヌヴィディア(NVDA)、主力の高性能ゲーム用「GeForce」や「Tegra」プロセッサに加え、人工知能のサーバー向けや自動運転向けなどが収益源に成長している。

なお前述のIHS Markit社発表のランキングでは、2016年が13位、2017年が10位、そして2018年上半期は8位となっている。

同ランキング4位(米国2位)は破たんしたエルピーダメモリを買収したマイクロン・テクノロジー(MU)で、DRAMやNAND型・NOR型フラッシュメモリを主力としている。同5位(米国3位)のブロードコム(AVGO)は、半導体メーカーのアバゴ・テクノロジーズが2016年に業界で格上だった旧ブロードコムを買収し、社名を引き継いで誕生した企業で、その後もM&Aを重ね企業規模を急拡大させてきた。

2017年11月に移動体通信技術分野で世界トップのクアルコム(QCOM)買収を提案するも拒否され、加えて安全保障上の理由でトランプ米大統領から買収禁止命令が出されたこともあり、断念に追い込まれた。

中国を筆頭に新興国も台頭

アメリカのIT産業は、現在においても技術のレベルや人材などの層の厚みにおいて世界随一だ。それが証拠に、スタートアップ企業が続々誕生し、そのなかから“ユニコーン”と称される市場評価10億ドル以上へ成長する企業が出てくる。

ただこの業界はどの業界にも増して競争が激しく、半導体にせよネットワークにせよ、中国を筆頭に新興国企業の台頭が目覚ましい。かつてのようにアメリカ企業が他を引き離して先頭を走るという時代ではなくなってきているのだ。

加藤 千明 ファイナンシャル・プランナー、「アメリカ企業リサーチラボ」運営

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かとう ちあき / Chiaki Kato

大手証券会社勤務の後、1993年7月、東洋経済新報社に入社。主に統計指標をベースとした刊行物を担当する一方、電機・化学業界担当記者としてITバブルの全盛期と終焉を経験。その後は、マクロ、マーケットおよび地域動向を主戦場に、データをもとにした分析、執筆などを行う。2005年より『東洋経済 統計月報』編集長、2010年より『都市データパック』編集長。『米国会社四季報』編集部を経て、2021年2月に退社。現在はファイナンシャル・プランナーとして活動するかたわら、アメリカ企業の決算情報を中心にSNSで発信。

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