アメリカ経済を象徴する「IT産業」の現在地 圧倒的優位性がなくなり熾烈な競争に

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かつて、1960年代のメインフレーム全盛時代、そして1970年代後半から1980年代前半のパソコン黎明期まで圧倒的な覇権を握っていたのがIBM(IBM)。

しかし、マイクロソフトやアップルの台頭で業績不振に陥り、大規模なリストラを断行。ハードウエアからソフトウエア、そしてクラウドやモバイル、ソーシャル、セキュリティなどのソリューションサービスへと大きく舵を切ってきた。人工知能「IBM Watson」の幅広い分野での展開にも注力している。

ハードウエアでは、パソコンは台湾メーカーや中国メーカーにお株を奪われたものの、それ以外の分野ではまだまだ負けてはいない。ネット接続用のルーターやスイッチで圧倒的なシェアを持つのがシスコシステムズ(CSCO)。

クラウド隆盛に伴うデータセンターやセキュリティ関連など成長分野の関連製品を強化している。ジュニパー・ネットワークス(JNPR)もルーターやスイッチ、セキュリティ関連製品などを展開している。ネットワーク自動化支援ツールなどのマルチクラウド関連製品を相次いで投入すると同時に、マルチクラウド・プラットフォームに強みを持つHTBASE社を買収し、一段の強化を図っている。

ストレージ分野もクラウド関連のビジネスが急拡大している。

最大手の一角をなすウエスタンデジタル(WDC)は、2012年に日立製作所からHDD事業を買収すると、2015年にはクラウド向けストレージソフトのアンプリデータを、16年にはフラッシュメモリ最大手のサンディスクを買収するなど、積極的なM&A路線で業容を拡大してきた。

HDDでウエスタンデジタルと双璧をなすシーゲイト・テクノロジー(STX)も、2011年にサムスン電子のHDD事業を買収。2014年にクラウド関連に踏み出すと同業のドット・ヒル・システムズを買収し一段の強化を図っている。また東芝メモリ買収の日米韓連合に加わっており、東芝メモリへのNANDフラッシュメモリ長期供給契約も締結している。

調査会社IHS Markit社が発表した2018年上半期の半導体売り上げランキングによると、トップ10のうち6社がアメリカ企業で占められている。首位は韓国のサムスン電子で、2位がアメリカのインテル(INTC)だ。

インテルは1985年にメモリから撤退しマイクロプロセッサーに軸足をシフトしている。CPU(中央演算装置)では圧倒的なシェアを持ち、特に1990年代後半から2000年代前半のパソコン全盛時代には、同社のCPUと「Windows」OS搭載のパソコンの組み合わせは「ウィンテル」と呼ばれるほどの圧倒的な存在感を示していた。

最近では2015年にFPGAと呼ばれる書き換え可能な集積回路の大手アルテラ、2017年には自動運転技術のモービルアイを買収し、データセンター関連やIoT分野での攻勢を強めている。

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