ウェブは炎上OKと思う、企業の大いなる誤解 中川淳一郞「2ちゃんねるから学んできた」

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治部:それはすごい。「2ちゃんねる」の批判を見て、PDCAサイクルを回したんだ。

多くのWeb媒体は、多少は差別的な表現だったり、不快に感じる読者がいたりしても、ページビューが伸びるからよしとしてしまう。でも「2ちゃんねる」の批判を見て「よくない」と判断したところに、中川くんの良心を感じますね。

中川:Web編集者の役割にはページビューを稼ぐ、収益を上げるというのがあります。でも俺が思う最大の役割は、炎上させないことじゃないかと。だから治部さんの本に各企業の炎上広告の例が載っていたけど、誰も炎上マーケティングを狙っている人なんていないと思うんですよ。

Webなら過激な表現ができると思ったら大間違い

――Webの炎上広告について伺います。治部さんの本にもあった例で、宮城県のPR動画がありました。「お蜜」役に扮した壇蜜さんが亀の上に乗って「お蜜、いっちゃう?」とセックスを想起させるセリフを言い、ゆるキャラが鼻血を出すものです。どう見ても炎上するPR動画なのですが、そもそも炎上マーケティングという商法はあるのでしょうか?

治部れんげ(じぶ れんげ)/一橋大学卒業後、日経BP社で経済誌記者となる。2006〜2007年、ミシガン大学フルブライト客員研究員。2014年よりフリージャーナリスト。2018年、一橋大学大学院商学研究科経営学修士コース修了。日経DUAL、Yahoo!ニュース個人、東洋経済オンラインなどにダイバーシティ経営、女性のエンパワーメントについて執筆。現在、東京大学大学院情報学環客員研究員。日本政府主催の国際女性会議WAW!国内アドバイザー。そのほかの著書に『稼ぐ妻・育てる夫―夫婦の戦略的役割交換』などがある(撮影:梅谷秀司)

中川:宮城県のPR動画なんて壇蜜の無駄遣いでしょ! 彼女は秋田出身なんだから、宮城県が起用する段階でおかしいし、観ている側をバカにしているでしょう?

治部:確かにいろんな意味で、壇蜜の無駄遣い(笑)。

広告パーソンでWebに詳しい中川くんに、ぜひ聞きたいことがあるんです。Web広告が炎上すると、必ず「これは炎上マーケティングだ。それに騒いでいるお前ら、ばーか!」とコメントする人がいますよね。こういったコメントを見ると、「この人は会社で働いたことがあるのかな?」と思ってしまう。広告はものすごい予算をかけて作るので、炎上したら宣伝の意味がなくなってしまうでしょう?

中川:炎上マーケティング自体もありえないし、炎上したら広告の意味がない。

治部:ビジネスの観点から言えば、炎上する表現は即刻やめるべきですよ。少なくともマスマーケットに出して、モノやサービスを売ってブランド価値を上げようとするなら、炎上表現はまったくなじまないし、むしろブランドにとってマイナスだもの。宣伝に何千万とお金をかけたのに炎上してしまったら、その企業にとっては損失しか残らない。まっとうなビジネス感覚を持っていたら、市場に出る前に炎上表現を思いとどまれるのではないかと。

中川:炎上イメージは、企業に残り続けますよ。サントリーでいうと、今回のセックスを連想させる「頂」のネットCM以外にも、2011年にものすごく大きな炎上をしていて。焼酎「鏡月」のホームページに「『鏡月』というその名前は韓国/東海(日本海)……に由来」と書いてしまった。

治部:それは、ものすごく炎上しそう……。

中川:ネトウヨが非常に食いつきやすいテーマで、反日企業のレッテルを貼られてしまった。それでサントリーは『鏡月』のホームページをすぐ削除したけれど、今でも『鏡月』のページにはその時のお詫びが残っている。

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