ウェブは炎上OKと思う、企業の大いなる誤解 中川淳一郞「2ちゃんねるから学んできた」
ジェンダー表現に気をつけるようになったきっかけ
――ネットの企業広告炎上について伺う前に、中川さんに1つ伺います。中川さんは、パンチの効いた雑誌の記事をリライトしてWebニュースにする時に、ジェンダー表現で気をつけていたことはありますか?
中川:ジェンダー表現は、ものすごく気をつけていました。理由は、配信したニュースが炎上するのは嫌だから。
俺が編集をしている『NEWSポストセブン』では、『週刊ポスト』『女性セブン』『SAPIO』本誌に掲載された記事をネットに掲載しています。『女性セブン』は、何の問題もなく雑誌からWebに転載できるんですよ。もともと雑誌の記事が女性視点で書かれている。女性が弱者だという前提に基づいて書かれているから、リライトの必要がない。
でも男性読者の多い『週刊ポスト』を転載する際には問題が出る。誌面で「死ぬまでセックス」などとうたっているわけで、女性は俺たち60代男性ともセックスしたいはずだという視点に立っているものだから、そのままWebに出したら炎上してしまうわけですよ。その場合は大幅リライト。あとは『ポスト』に出てくる「女のコ」という呼称は、全部「女性」に変えていましたね。
治部:男性雑誌をそのまま転載すると問題があると、どうしてわかったの? Webの黎明期から仕事をしていたから?
中川:そもそも俺がネットの炎上をかなり経験しているから。でも決定的な出来事が2006年にあった。当時、「パンツゲッター物語」という原稿を書くライターさんがいたの。
ある女性が「自分の穿いたパンツを越谷駅前の植え込みに置いた」とネット掲示板に書いたら、バカな男たちが越谷駅に殺到して植え込みでパンツを探していたんですね。その男たちのさまを、置いた女性が見て喜ぶという内容で。
当時、紙メディアの一段下に見られていたWebメディアでは、ライターが好き放題に持論を展開することが多かった。俺も記事が増えるのはありがたいので好き放題やってもらっていたらどんどんエロさが増していき、他の記事でも「女は欲情する」「女はバカだ」という視点で書かれる記事が増えてしまったんです。こうした記事は、「2ちゃんねる」に批判が数多く上がります。そこで、女性をバカにする視点は決定的にまずいと確信した。
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