ウェブは炎上OKと思う、企業の大いなる誤解 中川淳一郞「2ちゃんねるから学んできた」
――治部さんは本の中で、テレビなら考査があるからおかしなCMは出づらいけれど、Webなら自由にできると誤解をしている人が多いのではないかという指摘をされていました。
中川:その指摘はすごく重要ですよ。俺が「Webは自由に表現できて、過激なエロがOKというのは間違っている」と気づいたのは、2010年11月だった。
治部:気づく出来事があったんだ?
中川:あった。2010年って、「エンタの神様」「爆笑レッドカーペット」「ザ・イロモネア」と民放のお笑い番組が3つも終わって、芸人の活躍の場が減ったことがYahoo!ニュースのトピックにも出た時期なのね。
テレビでお笑いが観られないならネットで観ましょうということで、「ザ・エンタのニコニコカーペット」という3番組のタイトルをもじったネット番組を作りました。優勝は賞金100万円。各芸能事務所から250組もオーディションに来てくれて、決勝進出が12組。
ふたを開けてみたら、優勝を含む上位3組は正統派の漫才をした。一方、最下位の3組はすべてエロネタ。しかも下位3組は、普段だとそこまで下ネタをやる芸人さんじゃなかった。
治部:ネットだから、エロネタをやればいいと思った?
中川:そう。ネットだからと、エロな言葉を連呼した。そうしたらニコニコ生放送の視聴者からは「つまらん」「下品」と酷評ですよ。ネットはエロくていい、過激でいいというのは間違っていると、お笑いの評価ではっきりわかった。番組の視聴者が求めていたのは、やっぱり正統派のお笑いだったんですね。
広告の現場にある同調圧力と、それに乗る女性スタッフ
――それにしても不思議なのは、広告はチームプレーで作るのに、なぜ炎上するものができてしまうのでしょうか。
中川:広告を作る時の雰囲気って「うわー、面白い」なんて言いながら、一方向に流れてしまいがちなんですよ。
治部:そうなんだ(笑)。
中川:現場は、若手のコピーライターがコピーをA4の紙に書いて、1枚ずつ出していくんですよ。一番偉い人が「おおっ!」というと、他のメンバーも「おおっ!」という(笑)。この同調圧力が現場にはあって。
いろんな炎上CMは、現場の偉い人が深夜のノリで、女性への侮蔑的な意味の含まれた表現を「この言葉、いい!」などと認めてしまった可能性があるのではないかと思いますね。
――でもその場に、女性スタッフもいるんですよね?
中川:女性のスタッフがいても、その場の雰囲気に流されて一緒に盛り上がる。
治部:私が「小娘の皮を被ったおじさん」だった頃を思い出すと、現場で男性以上に過激なコメントをすることで、「おじさん社会の仲間に入れてもらっている私は勝ち組!」みたいな感じになってしまうんですよ。女性が現場にいたとしても、昔の私みたいな人だと、偉い人と一緒になって「おおっ!」って言ってしまうから(笑)。
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