かつてのようにパブリックな図書館と違って、現在の知識はテクノロジーを持つ企業によってアクセスが提供されている。グーグルの検索エンジンを使ってウェブの中を探したり、ヤフーのニュースで時事問題を知ったりする。
今は何の問題もないように見えるのだが、営利目的で活動する企業は、必要とあらば、完全にパブリックの利のために機能しなくても構わない。だからこそ知識は、そうした状況から独立した場所に確保しておかなければならないというのが、ケールの思いなのだ。最初は私財を投じて、そして今は自分の多くの時間を使って、インターネット・アーカイブに取り込んでいるのは、そのためなのである。
18歳までに芽生えた「壮大な目標」
実は、ケールは営利事業でも大きな成功を収めた人物だ。マサチューセッツ工科大学を卒業したケールが1992年に創設した会社ワイス(Wais)は、インターネットに接続し、それを通じてデータベースを検索するように考えられた最初の仕組みで、出版社や新聞社などに利用された。ワイスは1995年にAOLに買収されたが、その買収額は1300万ドルと言われている。
その後、ケールが創設したのはアレクサ(Alexa)という会社。これは、ウェブ利用を追跡できる技術を開発した会社で、サイトのラインキングなどにも使われている。アレクサは1999年にアマゾンに買収されたが、その額は2億5000万ドルだった。
ケールはテクノロジーおたくで、世界で求められる技術に関する先見の明を持つ人物。それと同時に、ごく普通の人々が自由を束縛されることなく、あらゆる知識にアクセスできるよう守られなければならないと訴えるアクティビストでもあるのだ。
彼は、幼い頃からコンピュータいじりが好きだったが、18歳のときにはすでに自由、プライバシー、知識といったことに対する意識を芽生えさせていたようだ。誰かに、「将来どんなことをしたいのか」と問われて、「電話で通話のプライバシーを守れるようなチップを開発したい」とか、「アレキサンドリア図書館のような電子の知の殿堂を作りたい」と答えていた。そのひとつが、ケールのライフワークになったのだ。
グーグルとの決定的な違い
さて今、インターネット・アーカイブのサイトに行くと、過去のウェブ・ページが3680万ページも保存され、多様なビデオが約150万本集められ、コンサートなどライブ音楽の録音が12万イベント以上集まっている。
この中には、コンサート中に観客が録音することを止めなかったバンド、グレートフル・デッドのコンサートをファンが録音した9000本も含まれている。アーカイブのために膨大な数のサーバーを自前で抱えている。
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