任期中実現に黄信号、安倍改憲に「断念宣言」 政権の政治的遺産づくりは「日ロ」へシフト

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ただ、参院選で自民党が議席を減らし、大方の予想通り「改憲勢力3分の2」が消滅した場合、主要野党の理解と協力が得られない限り「改憲発議」は困難となる。首相の後見人を自認する麻生太郎副総理兼財務相は「参議院は我々にとって極めて大きな要素だ。なぜなら、この参議院の3分の2という議席がある、なしで、憲法(改正)に直接影響するからだ」と危機感を露わにしている。しかし、国会での自民党の数の横暴が続く限り、「主要野党の選挙共闘態勢が固まって、自民苦戦につながる」(自民選対)のは避けられそうもない。

首相が国会閉幕時の会見で「(改憲は)国会次第で予断をもつことができない」と語ったのも、「改憲については。これ以上深追いしないという意思表示」(自民長老)にもみえる。

首相は10月中旬に行ったロシアのプーチン大統領との首脳会談で、北方領土問題と日ロ平和条約交渉の「早期合意」に大きく踏み出した。永田町では「国会での改憲論議が行き詰まった時期と重なる」(自由党幹部)との指摘がある。自民党総裁3選で史上最長政権への道が開けた首相にとって、最重要課題となる政権のレガシー作りを「改憲から日ロへシフトさせた」(自民幹部)という見立てだ。

安倍首相の初夢は「日ロ合意」?

多くのメディアは、首相会見での発言を「首相、2020年に改正憲法強調」(読売新聞)などと前向きに報じたが、与党内では「参院選もにらみ、首相を支持する保守派の離反を招かないため、お得意の“やってる感”をアピールしただけ」(公明幹部)との声も少なくない。来年の干支(えと)の己亥(つちのとい)は「足元を固めて次の段階を目指す年」という意味だが、現状をみる限り改憲実現への足元は固まりそうもない。

首相は例年通り、年末年始を都内のホテルで静養するとみられているが、初日の出の前にみる初夢は「安倍改憲ではなく、日ロ合意になる」(官邸筋)との見方も広がっている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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