安倍首相が描く「改憲への道」は視界不良だ

「公明」「参院選」「国民投票」が高い壁に

自民党総裁の座は守ったが、改憲にはいくつもの壁が(写真:共同通信)

9月20日の自民党総裁選で3選を果たした安倍晋三首相だが、「任期中の実現」を公言する憲法改正への道筋は一段と不透明になりつつある。首相が提起した憲法9条への自衛隊明記は、国民にも一定の理解があるものの、国民投票実施の前提となる国会発議のカギを握るのは与党・公明党で、慎重姿勢を崩していない。首相は「初めての憲法改正の実現」を史上最長政権の最大のレガシー(遺産)と位置づけるが、前途には多くの政治的ハードルが並んでおり、現状では「上りがみえない改憲双六(すごろく)」(自民長老)というのが実態だ。

首相は総裁選でも憲法改正を最大の争点とした。昨年5月に突然提起した「安倍改憲案」の中核は「不戦の誓いと戦力不保持」をうたった9条1・2項を維持しての自衛隊明記だ。総裁選で首相に挑んだ石破茂元幹事長は「9条2項削除による自衛隊明記」を主張。だが、首相は「政治は実現可能性を重視すべきだ」と跳ねのけ、圧倒的大差で3選を決めることで、自民党全体で改憲実現に突き進む環境づくりを狙った。しかし、「党内の民意」ともいえる地方票で石破氏が首相に肉薄したことで、そのもくろみは外れた。

首相の戦略は、10月26日にも召集される次期臨時国会に「安倍改憲」を条文化した自民改憲案を提出することで、衆参両院憲法審査会での各党協議を本格化させ、来年通常国会の会期末までに国会発議にこぎ着ける、というものだ。

しかし、山口那津男公明党代表は「事前協議」の拒否を明言し、立憲民主など主要野党は安倍政権での改憲論議そのものに応じない構え。政治的に見れば来年通常国会での改憲発議は絶望的だ。しかも、来夏の参院選での「改憲勢力3分の2の維持はほぼ不可能」(自民選対)とされるだけに、このままでは「3選後の任期内での改憲も困難」(自民長老)との見方が広がる。

党内論争決着せず、根強い「拙速」批判

憲法改正をめぐる首相の発言は、ここ1年余り、政局の変動とともに揺れ動いた。

2017年5月3日(憲法記念日)には改憲派集会に寄せたビデオメッセージや読売新聞の同日付け朝刊の単独インタビューで「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」「自衛隊違憲論をなくすため、9条1・2項を残して自衛隊の存在を明記する」と高らかに宣言。その後のいわゆる「もり・かけ疑惑」による政権動揺時には「(改憲は)スケジュールありきではない」といったん後退した。だが、総裁選前には「党としての憲法改正案を次の国会に提出できるよう、とりまとめを加速すべきだ」と再びアクセルを踏み込んだ。

首相は、総裁選の憲法論争で石破氏の慎重論を抑え込み、トリプルスコア以上の大差で3選を果たすことで「党内論争に決着をつける」(側近)ことを狙っていた。そのため、派閥単位での各議員の締め付けと、なりふり構わぬ党員・党友への組織的働きかけに全力を傾注した。しかし、そうした首相の強権的手法が一般党員などの反発を招き、地方票では「首相55%石破氏45%」と、首相支持が8割を超えた議員票とはかけ離れた結果を招いた。

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