安倍首相が描く「改憲への道」は視界不良だ 「公明」「参院選」「国民投票」が高い壁に

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そこで浮上してきたのが参院選に合わせた「衆参同日選」説だ。「参院選は中間選挙で、野党共闘は組みやすいが、政権選択選挙となる衆院選が重なると、本格的な統一候補擁立など不可能」(国民民主幹部)というのが常識で、これまでの同日選では自民党が圧勝してきた経緯もある。「もし首相が同日選に踏み切って、衆院で安定多数、参院でも前回並みの50議席台半ばを確保すれば、国政選挙7連勝で任期内の改憲実現にも道筋がつく」(細田派幹部)との声が出るゆえんだ。

しかし、その場合には「憲法改正が最大の争点となり、現在の世論調査結果から見ても、自民党の苦戦は必至」(自民選対)との声も少なくない。首相にとっても「まさに、のるかそるかの大勝負で、負ければ即退陣」(麻生派幹部)となることは避けられそうもない。もちろん、自民党所属議員のほとんどが「そんな強引な同日選には反対」(岸田派若手)とみられ、「首相にもそんな度胸はない」(自民長老)といわれている。

「衆参同日選」の大勝負はリスクが高すぎる

そうした中、首相は23日からの訪米でも「圧勝3選」を前面に押し出して、アメリカのドナルド・トランプ大統領ら世界のリーダーと精力的な首脳外交を展開している。各種世論調査でも内閣支持率が上昇し、首相が国連総会で演説した26日には東京株式市場の終値が2万4000円の大台を超えた。首相同行筋も「首相は追い風に意気軒高だ」(側近)と笑顔をみせる。ただ、首相らが「政権の今後を占う大一番」(側近)と位置付ける30日投開票の沖縄県知事選は、「予想を超える大接戦」(自民選対)でまったく予断を許さない状況だ。

首相にとって憲法改正は「政治家としての悲願」(側近)で、しかも政権にとっての「唯一最大のレガシー(遺産)」であり「改憲を断念すれは、政権維持の理由もなくなる」(自民幹部)。首相にとっての「改憲双六」は、亥年の来年に猪突猛進して失敗すれば「振り出しに戻る」し、国会発議を参院選後に先送りして「一回休み」を選択しても、改憲実現という"上がり"が見えるかどうかは不透明だ。

このため永田町では、超現実主義者といわれる首相が、史上最長政権という金字塔を手にする2019年11月下旬までに、「大勝負をかける可能性は少ない」との見方が大勢だ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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