戦時法制に逆戻り、危うい特定秘密保護法 狙いは日米安全保障の実態報道の制限

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情報公開は欠点だらけ

日本という国はそもそも、国民の知る権利という観点から見ると、先進国の中では非常に遅れている。たとえばわが国の情報公開法には、次のような大きな欠点がある。

第一に、開示情報の範囲が狭い。その結果、開示された公文書のコピーは黒塗りだらけとなる。

第二に、開示手数料が高い。その経済的負担が開示請求への抑止力となっている。

第三に、開示決定までの期間が長い。

第四に、不開示決定の場合、その理由が開示されない。

日本では公的な記録を保管官庁が裁量で破棄したり、隠したりするケースがかなりある。西山事件の極秘電文も現在、不存在ということになっているが、破棄されてしまった可能性が高い。

重要な会議でも、議事録を取らないケースが存在する。東日本大震災の原発事故への対応を決めるいくつかの重要会議で議事録が取られていなかったことは問題となった。

古い話では、1945年8月、日本がポツダム宣言の受け入れを決めた直後、後世に残したくない、あるいは連合国に見られたくない大量の公文書が軍によって焼却されてしまったことが有名だ。知られると困る事実を闇に葬るのも“国家権力の常”なのである。

特定秘密保護法は、秘密の指定が政府の裁量でいくらでもできる点、秘密にする期間もいつまでも延長できる点、特定秘密の指定、解除、廃棄などの詳しい仕組み自体が秘密である点など、ほとんど戦時法制に逆戻りするような、成立させてはならない極めて危険な法律である。

現在、日本に必要なのは、時の政府の都合による公文書の破棄や滅失を禁止し、しっかりした保存を義務づける公文書管理法の改正と、情報公開を実質的なものにする情報公開法の改正なのだ。

(撮影:ロイター/アフロ =週刊東洋経済2013年12月2日発売号

福永 宏 東洋経済 記者

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ふくなが ひろし / Hiroshi Fukunaga

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