記者も悩む「イエメン」あまりにも悲惨な現状

ジャーナリズムにできることは何なのか

戦災を受けた港湾都市ホデイダからイスラム教シーア派武装組織フーシ派が支配する山々に向かって、でこぼこ道を1500キロ近く移動していたときには、何度もつらい場面に遭遇した。どんなことがあっても人々が頑なに守ろうとする習慣もあった。

町々の中心部には毎日、イエメン人の嗜好品であるチャットという麻薬の葉を求める男性たちであふれかえる。チャットの市場は社交の場だ。男たちは、一部は銃を肩から下げながら、情報交換し、友人に会い、午後にはチャットをかんで味わう。

イエメンはけっして無秩序ではない

男性たちの間を縫って、黒いマントを羽織った女性たちが忙しく動き回る。ある場所では、口論から殴り合いのけんかが起きていた。飢餓に襲われながらも、習慣をやめようとしない人たちがいるのだ。

ある医療機関で出会ったイブラヒム・ジュネイド(60)は、病気で弱った生後5カ月の息子のかたわらでチャットをかんでいた。歯や唇が緑色に染まっている。ジュネイドの妻(25)はそのそばで黙って立っている。看護師たちが彼らの息子をホイルのブランケットに包んで体を温めていた。

ジュネイドと妻、そして病気で弱った5カ月の息子(写真:Tyler Hicks / The New York Times)

ジュネイドは、息子に十分な食べ物を与えられなかったことを悔いていた。彼は2度の結婚で授かった13人の子どもを養っているという。

こうした混乱した時期にあって、チャットをかむという習慣の意味を理解するのは困難かもしれない。しかし、ジュネイドのような男性にとっては、暮らしに欠かせないものだ。中東最古の文明の1つである古代社会のレジリエンスの証しでもある。

「イエメンは無秩序だと言われているが、そうではない」と、1980年代からイエメンで援助活動に従事し、現在はモカで国境なき医師団を運営するティエリー・ドュランドは言う。「今もシステムがある」。

「イエメンを新聞記事で3行にまとめることも、テレビ番組で、3分間で説明することもできない」とドュランドは続ける。「この国は家族、部族、伝統によって体系化されている。そして何においても、それらのシステムが今なおあり、それらは強力だ」。

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