建設業界の現状は「ウハウハ」ではない 大成建設社長が語る「ゼネコン活況」の現実
――その一方で、公共工事では入札不調が増えています。
各社が選別しているのではなく、その予算ではできないということだ。東北の復旧・復興で労務単価が上がって、そういう流れが関東などにも及んできて、全国的に広がりつつある。建設業がかなり熾烈な競争をした結果、そのシワ寄せが末端の作業員に行ってしまった。真夏の炎天下に汗をかきながら仕事をやるより、小売店の店員や宅急便の運転手をやっているほうが体は楽だということで、随分と転職してしまった。そういう人たちを建設業に戻ってきてもらうためには、やはり職場をよくするしかない。
民間投資の回復がカギ
――公共工事の発注などに問題はあるのでしょうか。
スーパーゼネコン5社において、公共投資のウエートはかなり低い。公共投資でいちばん潤っているのは、地方ゼネコンだと思う。彼らは公共投資のウエートが高い。地方自治体は地元の建設業に仕事が行くよう、仕事を細分化して発注する。われわれになかなか恩恵が回ってこないという構造が基本的にある。だから、大手5社の主戦場は民間の設備投資関係。それが回復しないかぎり、楽観はできない。安倍政権になってからは、よくなってきたのは確かだけれど。
――随分慎重な考え方ですね。
慎重というのではなく、これが現実だ。現実を見極めないと。有頂天になってやっていても仕方がない。2020年に東京五輪があっても、その後のことも考えないといけない。
前回の東京五輪では、終了後はひどい建設不況が起きた。2020年以降もその再現になると思う。だから、その辺のことも考えて、いろいろ手を打っていかないといけない。
――資材費が高騰していますが、調達面の工夫は?
当社はITを駆使して資材を調達している。国内は何年か前に電子調達ネットワークが完成した。どの資材をどの会社からだったらどの値段でいつ納入できるか、全部データに入っている。たとえば、サッシも日本メーカーだけでなく、外国のメーカーも含めて、こういうものだったらいくらの値段で納入できるか、蓄積されている。そういうネットワークは当社の絶対的な強みだと思っている。
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