ベンツ「新旧Gクラス」に見た武骨すぎる凄み なぜ従来型を最後までつくり併売したのか

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さらに衝撃を受けたのは、普通のクルマのように、運転がしやすくなったこと。前述した内容に反するかもしれないが、従来型のGクラスは基本設計が39年前であることも影響して、プルプル&ブルブル走行振動があることや、ハンドルを切った際に最近のクルマのように操作に遅れることなく俊敏に曲がるなどの特性は少ない。言うなれば、若干癖があり、運転している感や操っている感があり、マニア目線で言えば運転そのものを楽しむことができた。それがもとで高速道路では、AMGモデルであっても飛ばそうという気分にはならず、G550の世界感がとてもGクラスにマッチしていた感覚も持っていた。

従来型のGクラス、G 550(写真:©Mercedes-Benz Japan)

新型はそれらすべてが洗練。一般的なクルマの価値判断であれば、大絶賛で大拍手の進化だ。プルプル振動やブルブル振動はかなり小さく抑えられ、ハンドル操作に対しても遅れることなく素直に反応するし、高速道路の追い越し車線を何の意識もせずに走れる。その乗り味、雑な表現だが広い目線で言うと、メルセデスの大型SUVである「GLS」にも似ており、高級感も漂わせている。

「そうであるなら、荷物も多く積めて後席も広くて、使い勝手も快適性もさらに高い『GLS』でもいいではないか?」と思ってしまうのだ。よりズバリで言うなら、“あの”「ミリタリーのアイコニックな見た目が欲しいという以外、Gクラスに乗る意味がなくなったではないか!」という感覚がある。

従来のファンと、新規客の両方を満たす方法

そのような二分化するだろう新型Gクラスへの判断を予測して、メルセデスは従来型との併売を計画し、いま実行している。今までのGクラスファンは、そのまま従来型で満たしつつ、逆に“あの”アイコニックな見た目に引かれてたどり着いた新規客を“普通の”クルマの乗り味で受け入れて取り入れようという新型の造り込み、見事としか言いようがない。

個人的マニア目線では、新型より従来型のほうが、タフな雰囲気を漂わす武骨感が若干強くあるし、狭い道が走りやすいし、運転している感はあるし、たとえ新型がより多く走り出しても古さ感は漂いにくく、「従来型なのだから安くして」と言いやすいので興味がそそられる。ちなみにAMGモデルを求めるなら、安定感の高い新型のほうがより安心してアクセルを踏めるし走りを楽しめるのでオススメ。

ブランド力の違いはあれど、モデル単体の性能や商品力だけでなく、メルセデスのようなラインナップを通しての商品力のあり方、見せ方を“少し”だけ意識するのも、日本メーカーに求められると言えそうだ。

五味 康隆 モータージャーナリスト

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ごみ やすたか / Yasutaka Gomi

自転車のトライアル競技で世界選手権に出場し、4輪レースへ転向。全日本F3選手権に4年間参戦した後、モータージャーナリストとしての執筆活動を開始。高い運転技術に裏付けされた評論と、表現のわかりやすさには定評がある。「持続可能な楽しく安全な交通社会への貢献」をモットーとし、積極的に各種安全運転スクールにおける講師を務めるなど、執筆活動を超えた分野にもかかわる。また、環境分野への取り組みにも力を入れており、自身で電気自動車やハイブリッド車も所有。https://www.facebook.com/yasutakagomi53

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