ベンツ「新旧Gクラス」に見た武骨すぎる凄み

なぜ従来型を最後までつくり併売したのか

メルセデス・ベンツのホームページに行き、Gクラスのページを覗いてもらうと、左上に新型Gクラス、従来型Gクラスという表記がある。そう、実は今でもGクラスだけは、従来モデルが併売されているのだ。

クルマに詳しい方はわかるはずだが、従来型の生産は新型が出ると当然として切り替わる。これはGクラスも例外ではないが、Gクラスの場合、最後までフル稼働で生産を続けて余剰分を意図的に造り上げていた。当然、その39年間ものあいだ熟成を重ねてきた従来型Gクラスの数にも限りがあり、それを手にできるタイミングも限られているのだが、その特殊性あふれる選択が見事に感じて仕方がない。

「そもそも新型と従来型、どちらの性能が高いのか?」と言われたら、答えるまでもないだろう。では、なぜ従来型をわざわざ最後まで造り、併売する戦略をとったのか? その答えは、クルマに触れるとハッキリわかる。

まず、見た目では、現行型と新型で共通するパーツは、スペアタイヤカバーとドアハンドル、ヘッドライトウォッシャーノズル、そしてサンバイザーの4点しかない。ほぼすべてが新しくなっているのに、オーナーではない一般的な視点からは、そのフルモデルチェンジの差に気がつかないはず。

まさに老舗料理店のように、進化させながらも、Gクラス特有の武骨で力強さを漂わすアーミースタイルには変化を感じさせず昔ながらの味を確保しているといったところ。これだけであれば、すべてを新型にシフトするはずだが、実は室内および乗り味にはわかりやすい新型感が出ており、ここにさまざまな意見が飛び交っているし、現行型が併売される要因がある。

Gクラスの魅力

筆者はオーナーだったこともあるので、ハッキリ言うが、Gクラスの魅力は他には紛れないそのアイコニックな見た目と、狭い道の走りやすさにあった。もともとオフロードなど過酷な環境を走ることを踏まえて、前方の見切りがよく、車幅感覚などボディの4隅まで意識しやすいスクエア形状にした造りが、都心部などを含めて日本の住宅街などにありがちな狭い道を含めて走りやすかった。

しかも通常のSUV以上に高い運転視点が、さらに狭い道の走りやすさと安心感をもたらすので、知らない人はイメージしづらいかもしれないが、実は運転が苦手な方でも気軽に乗れる特性を備えており、そこも好評ポイントだった。新型ではボディが大きくなり、室内が大きく広くなり、高級車のようにユッタリ乗れるようになったので、好印象を抱くユーザーも大勢いるだろうが、昔ながらの走りやすさの利点を求めるユーザーには残念な一面になっている。

具体的には、従来モデルに対して新型の全長は242mm長い4817mm。全幅は71mm広い1931mm。そして全高はほぼ同じ1969mm。ちなみにホイルベースは40mm広がり2890mm。今はどのモデルも衝突安全への対応と、世界的に人間の体格が大きくなってきたことへの対応から、クルマを大きくしているが、Gクラスもそれに準じた。

とはいえ、乗ってみると新型には従来型の魅力はない。ボンネットの見えやすさや運転視点が高いことによる運転のしやすさはあるが、従来型と比べると、狭い道での走りやすさが劣る。それは当然だろう、全幅が1931mmもあるのだ。

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