ベンツ「新旧Gクラス」に見た武骨すぎる凄み なぜ従来型を最後までつくり併売したのか

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縮小

秋口に大きな変更が加えられた新型「Cクラス」では、クルマを構成する半分以上のパーツに相当する6500点以上が新規に起こされたにもかかわらず、オーナーでなければその進化に気がつかないほど見た目を含めてさり気なく進化を遂げた。背景には、比較的に保守的な所有層が多いことと、現オーナーのクルマを古く感じさせない配慮、さらには“いま”そのデザインは市場から強く支持されているので“いじらない”という姿勢がある。

39年ぶりにフルモデルチェンジ

日本のような成長市場ではない縮小市場の勝利には、台数を直接狙うのではなくシェア拡大の発想、もっと言えば、いかに新規を取り放出を防ぐかを効率よく進められる商品展開がなされている。それが1つのモデルとして結実したと見受けられたのが、今年の春に39年ぶりにフルモデルチェンジを迎えた「Gクラス」だ。

クルマに詳しくない方が見たら、「39年ぶり」のフルモデルチェンジを誤字だと思うのではないだろうか。クルマのモデルサイクルは長くても10年前後。短いと4年ほどで切り替わる。そんななかで39年だ。あのスズキ「ジムニー」ですら20年である。

勘違いしてもらいたくないが、途中休止していて結果39年ではない。軍用車として設計されたモデルを、一般的な利用ができるように快適に仕立ててドイツ語でオフロード車を意味する「ゲレンデバーゲン」と名付けて販売(後にGクラスに改名)し出してから、フルモデルチェンジせずにずっと継続販売をして39年間も経った。もちろん装備などを最新に切り替えるなど、マイナーチェンジは要所で施されたが、フレーム部からボディーなどは、一切変更がない。

その根本的な理由は、売れ続けていたから。

その本質は、軍用車であり本格オフロード車ではあっても、所有層やその使用シーンは都会派でありオンロードが多いという特殊性を踏まえると、あの見た目に大きな付加価値がある。だからこそ、安全性など時代要求を満たすためにも進化させないといけないが、進化したことを意識させすぎてはならないという絶妙な進化。以前、老舗の料理店のすごさとして、「昔ながらの味」と言わせ続ける難しさを聞いたことがある。

時代の変化とともに基本となる食が変わり味覚も当然ながら変わっていく中で、そう言わせ続けるために少しずつ手を加えていく。そう、進化していることを気づかせずに、進化させ続けることが、長く続く老舗料理店の難しさだと。

Mercedes-AMG G63(写真:©Mercedes-Benz Japan)

あまり知られていないが、メルセデスはそのGクラスの特殊性から、ハイパフォーマンス部門の「AMG」と同じように、Gクラス専用の部門を立ち上げてほかのノーマルモデルとは一線を画す扱いをしてきた。そう、Gクラスの昔ながらの味を保ちながら、今の価値観のユーザーにも受け入れられる絶妙な進化の裏には、相応の社内態勢がとられていたわけだ。

その特殊性が生み出した1つの特性とも言える現象が今、目の前で起きていることをご存じだろうか。

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