皇室とそのお金事情、今さら聞けない超基本 池上彰が皇室典範と皇室経済法から徹底解説
このように、姓も戸籍もない天皇と皇族は、一般国民ではないので、私たちが持っているさまざまな自由や権利も制約されることになります。例えば、選挙権もなければ、表現の自由や移動の自由、職業選択の自由もありません。
ただ皇室典範では、15歳以上の内親王、王、女王は、本人の意思に基づいて、皇室会議の承認を得ることができれば、皇族の身分を離脱できると定められています。ですから、極端なことをいえば、愛子さまや眞子さま、佳子さまは、どうしても皇籍を離脱したいと思ったら、皇族会議の承認をもらえれば、結婚する前でも皇籍を離れることができるわけです。
それに対して、皇族男子にはそういった自由がありません。さらに結婚も、皇族をはじめ内閣総理大臣や宮内庁長官ら10名で構成される皇室会議の承認が必要で、個人の意思だけで結婚することはできません。当然、結婚をしても皇族のままです。
現在の皇室典範では、皇族として生まれた男性は、一生、天皇あるいは皇族として生活しなければならないのです。
皇室の財政事情はどのように決まる?
続けて、皇室の財政事情を見ていきましょう。
もしかしたら「皇室はお金持ち」と思っている人もいるかもしれませんが、実は皇室には私有財産がありません。なぜかというと、日本国憲法第88条で「すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない」と定められているからです。
戦前は現在とは違い、皇室の財政は国家財政と切り離されていました。そのため、皇室には莫大な資産がありました。
ところが、第二次世界大戦敗戦後、日本国憲法の施行により「財産税」が課され、それらのほとんどが国有化されました。当時、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が算出した昭和天皇の財産は約37億円。その9割が財産税として国有財産となり、残った資産もほとんどが国有財産となります。
昭和天皇に残された金融資産はわずか1500万円程度でしたが、これは国有化されずに、昭和天皇の私有財産となりました。この私有財産を憲法上、どのように考えるべきかどうかは、はっきりとした答えは出ていません。
一方、国会の議決で認められる皇室の費用には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。「皇室経済法」という法律では、皇室の費用を「内廷費」「皇族費」「宮廷費」という三種類に分けています。
内廷費というのは、天皇・皇后両陛下と皇太子一家の私的な費用で、年額は3億2400万円。この額は、1996年度から変わっていません。この内廷費には、食費、被服費、研究経費、私的な交際費、御用邸などへの私的な旅行費、宮中で受け継がれる神事の経費などのほか、宮中祭祀にかかる人件費なども含まれます。
それに対して皇族費は、皇族としての品位を保持するために、秋篠宮ご一家をはじめとしたそれぞれの宮家に支出されるものです。2018年度の予算総額は3億6417万円でした。
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