レクサスの中国現地生産に潜む3つのリスク 競争激化で高品質とブランド力維持できるか

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ベンツは年産30万台の新工場を建設、来年中国初の現地生産となる電気自動車「EQC」を投入する予定。こうしてドイツ系ブランド3社は2020年に合算200万台超の生産能力を形成すると同時に、基幹部品も輸入から現地生産に切り替え、一段のコスト削減を進める。

しのぎを削る高級車ブランド

一方、2014年に中国で現地生産を果たした日産のインフィニティの今年の販売台数は、目標の10万台に対し実績はその半分にとどまりそうだ。ホンダのアキュラは2016年に初の中国産SUV「CDX」を投入し、昨年は1万6000台を記録したものの、SUV市場の減速や新車投入の遅れにより、今年の販売台数は前年比約4割減となる見込みだ。各社がしのぎを削る中国高級車市場では、ドイツ車がこれからも生産能力で競合車を圧倒しそうであり、日本車にとって現地生産はタフなものとなろう。

中国政府は今年、NEV分野の外資出資制限を撤廃。2022年には自動車市場を全面的に外資に開放すると発表した。テスラは現在独資で上海新工場を建設し、BMWは中国合弁企業に対する出資比率を2022年までに現在の50%から75%に引き上げる。

現状、高級車を現地生産する潮流からは一線を画すトヨタの戦略としては、NEV分野での独資による現地生産を先行させつつ、レクサスのブランド力を中国市場で漸進的に高めることが1つの選択肢として挙げられよう。

魅力的なNEVや省エネ車の投入、行き届いたアフターサービスの強化などにより、ものづくりの「匠の心」を前面に出し、若年層を含む多くの中国人ファンを獲得することをトヨタに期待したい。

湯 進 みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員、上海工程技術大学客員教授

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タン ジン / Tang Jin

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、日本・中国自動車業界の知見を活用した日系自動車関連の中国事業を支援。現場主義を掲げる産業エコノミストとして中国自動車産業の生の情報を継続的に発信。中央大学兼任教員、専修大学客員研究員を歴任。『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など著書・論文多数。(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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