レクサスの中国現地生産に潜む3つのリスク 競争激化で高品質とブランド力維持できるか
レクサスの中国生産は販売台数の一層の伸長を期待させるものではあるが、そこには期待と同時に3つのリスクが潜むものと思われる。
1つ目のリスクは、ハイクオリティーを維持できるのか、という問題である。現在レクサスのほとんどの車種が日本国内で製造され、海外に輸出される。トヨタが国内生産にこだわるのは世界トップレベルの品質を維持したいからだ。
日本と同レベルの製造技術を育成できるか
トヨタの高級ブランドとしてレクサスには、製造工程の精度や部品間のすり合わせなどに高い完成度が要求され、それには「匠」といわれる多くの熟練工の存在が不可欠だ。近年中国の自動車製造技術は着実に向上しつつあるものの、技術者や熟練工を一から育成しようとすれば、日本と同様のモノづくり水準を実現するのは容易ではない。
現地生産に切り替えたキャデラックは販売台数の増加を果たしたが、部品調達や生産工程を含む品質管理に緩みが見られ、2018年1~10月末の消費者の苦情件数は合計341件と2016年から5倍に膨らんだ。同時期のレクサスの苦情件数は合計41件に抑えられ、BMW(同70件)やベンツ(同168件)を上回るハイクオリティーを実現した。
2つ目のリスクは、ブランド力を低下させかねない、という懸念だ。中国では、「日本製=高品質の保証」といったイメージを持つ消費者が多く存在する。全量輸入販売するレクサスは「匠の心」や「スマート・ハイブリッド化」をコンセプトとし、消費者に高品質と技術の差別化を訴求し、需要を取り込んできた。
加えて中国政府は7月、自動車輸入関税を25%から15%に引き下げる一方で、米中貿易摩擦が激化した結果、米国製自動車に対する輸入関税を15%から40%に引き上げた。足元のレクサスの販売台数増加はこうした関税の恩沢に浴した結果ともいえる。
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