レクサスの中国現地生産に潜む3つのリスク 競争激化で高品質とブランド力維持できるか

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仮にそうだとすれば、他社に遅れて現地生産する高級車ブランドが、長い年月をかけ中国市場に浸透してきたドイツ系メーカーのブランドと真正面から競争するのは容易ではなく、レクサスは徐々に価格競争に巻き込まれ、レクサスのブランド力を低下させかねない。実際、キャデラックが昨年から販売台数の急増を実現した裏には大幅な値引き販売があった。

3つ目のリスクは、中国の提携パートナーと今後も良好な協業関係を維持できるのか、ということである。中国政府は外資企業の中国での自動車生産を合弁形態でのみ可能とさせ、合弁相手は2社まで、出資比率は上限50%といった制限を設けている。

トヨタは第一汽車、広州汽車とそれぞれ合弁企業を設立した。中国企業側には中国政府や現地規制への対応を、トヨタには合弁相手への技術やノウハウの提供といった役割が期待されている。

現地提携社と良好関係を維持できるか

そのようななかで、仮に現地生産したレクサスの販売台数が期待値を下回った場合、トヨタに合弁相手に対する発言力がなければ、部品サプライヤーの選定や販売体制の構築などの問題で両者の意見が対立し、それがレクサスの品質やブランド力に影響を及ぼす可能性がある。

中国高級車市場が細分化するなか、ブランド力ではまだドイツ系高級車に敵わないトヨタにとっては、今後も中国事業を拡大する余地はあるものの、現地生産は安易に選択できるものではない。

高級車市場のさらなる拡大が期待されるなか、ドイツ系高級車は新エネルギー車(NEV)を含むラインナップの拡充や生産能力の増強を実施し、一般車市場からの消費者獲得にも力を入れる。アウディは2017年にプラグインハイブリッド(PHV)「A6Le-tron」を発売、今年はSUV「Qシリーズ」の専用工場を稼働させ、中国での生産能力を81万台とした。またBMWは今年、PHV「530Le」を投入、中国での生産能力を45万台から来年52万台に引き上げる計画だ。

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