「医療的ケア児」生きのびた子どものその後 彼らが社会参画するには、何が必要なのか

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その取り組みの代表的なものが「統合保育」だ。統合保育は、障害や医療的ケアのあるなしにかかわらず、子どもたちが一緒に過ごす活動である。

障害のない子どもが幼い頃から障害のある子どもと接することによって、障害に対する理解を深めたり、障害のある子どもが障害のない子どもたちから刺激を受けて成長したりといった意義があるとされる。

矢部さんが運営する通園事業所「療育室つばさ」に通う、医療的ケアを必要とするある男の子の場合。はじめて訪れた1歳の時点では寝たきりの状態だったが、3歳でハイハイができるようになり、5歳になったいまでは小走りまでできるようになった。

小走りができるようになった男の子。血液の酸素の濃度がとても低く、「カヌラチューブ」と呼ばれる管を鼻につけ、濃縮された酸素を取り入れている(写真:「リディラバジャーナル」編集部)

こうした子どもたちの成長を見てきた経験を踏まえて、矢部さんは、療育室に通う子どもが障害のない子どもたちの動きを観察して真似できる環境をつくっていくことを大切にしているという。

そんな統合保育を行う上では、保護者らの理解も必要だ。

「歴史をひも解くと、統合保育が頓挫してしまうきっかけは、障害のない子どもの親によるネガティブな意見が多かったようです。ですが、いまは時代も変わって、否定的な意見はあまり聞きません。むしろどんどんやってください、という声のほうが多いです」(矢部さん)

医療的ケア児の受け入れに熱心な自治体も

医療的ケア児は学校から受け入れを断られるケースもある。一方で、医療的ケア児の受け入れを推進している自治体もある。

大阪府では「すべての子どもの学びの支援」を教育振興の目標の1つに掲げ、「ともに学び、ともに育つ」教育をすすめている。その一環として、学校おける医療的ケア児の受け入れにも熱心だ。

特別支援学校以外の小中学校への看護師配置補助事業については、国が始める10年前の2006年度からスタートしている。

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