個々のモデルについて詳しい説明は省略するが、ティール組織と対比するうえで注目したいのは、3番目に位置づけられたオレンジ色の組織だ。産業革命によって生まれた「会社全体の目標を部門・社員単位に細かく分解して任せ、それぞれの達成を積み上げることで目標を実現する」という考え方だ。これは、長らくマネジメントの基本とされており、現代もほとんどの会社がこのモデルに当てはまる。
組織固有のカルチャーや価値観の浸透によって現場へ権限移譲するような、ボトムアップ型のグリーン組織(4番目のモデル)も増えてはいるが、まだまだメジャーなのはオレンジだろう。
オレンジ組織においては、上司がいかに部下へ目標を降ろすか(仕事の任せ方)、いかにして達成させるかが組織の成果に大きく影響する。だからこそ中間管理職の存在・能力が鍵であり、目標達成のための「マネジメント」が重視されてきたのだ。
上司が業務を指示・管理しない
これに対して、ティール組織では経営者や上司が社員の業務を指示・管理することはない。組織がビラミッド型の構造をしておらず、全員がフラットに協力しあいながら、社会に価値を提供しているのがティール組織の特徴だ。
極端な例では、マネジャーがいない組織や、自分で昇給額を決める(上司が部下を評価しない)会社もある。つまり、私たちがこれまで常識と考えてきた組織運営のセオリーとは真逆の発想とも言える。
このように、ティール組織は一見すると荒唐無稽な概念のようにみえる。しかし、ティール組織を象徴する3つのポイントに着目してみると、実はとても理に叶った考え方であることがわかる。そこでここからは、ティール組織のポイントを1つずつ解説していこう。
1つ目は、「セルフマネジメント(自主経営)」。文字どおり、上司の指示を受けて行動するのではなく1人ひとりが自分の判断で行動し、成果をあげていくやり方だ。
これを実現するには社員への権限移譲が必要不可欠だが、裁量を適切に行使できるかという側面で懐疑的な意見があるのは想像に難くない。これに対して、ティール組織では「助言プロセス」と呼ばれる仕組みが機能することで、誰もが適切な意思決定ができるようになる。
たとえば、ある組織では誰でもどんな判断でもして良いが、そのためには「専門家」および「その決定が影響する人」の両方からアドバイスをもらうことを課している。ただしあくまでもアドバイスであり、最終的に決定するのは本人の判断だ。
こうすると、間違った判断にならないように周囲は本気でアドバイスをするようになるし、意思決定する当人も自分の責任のもとで決断するため、熟考するようになる。
2つ目は「ホールネス(全体性)」。これは、Googleが社内で実証した結果を発表したことで話題になった「心理的安全性の確保」にも通じる観点だ。
従来型の組織において人は評価される立場であるため、意識・無意識問わず「期待されている役割」を演じようとして自分の一部分しか見せず、本来の自分の能力や個性にふたをしているということがある。個人のありのまま(全体)を尊重し、受け入れることを重視するのがティール組織だ。
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