そして最後は、「エボリューショナリーパーパス(進化する目的)」。従来型の組織において、組織が目指す方向性は経営者やマネジャーなどのリーダーが示すべきものだ。しかし、ティール組織においてリーダーは「指し示す人」ではなく「耳を傾ける人」だと位置づけられる。
会社のビジョンや事業、サービスは、その担い手である社員の意思でどんどん進化するべきだという考えであり、つねに現実に目を向けてチューニングを続けることで、組織としての存在目的を陳腐化させない効果があるだろう。
「対話」がとても重要になる
さて、ここまでご紹介した3つのポイントだが、どれも「対話」が重要になっていることにお気づきだろうか。アドバイスをする、個を認め尊重する、耳を傾ける。これらはいずれも上司が一方的に部下に指示するコミュニケーションでは成立しにくい。ティール組織への進化は、マネジメント変革であるとともに、コミュニケーション変革でもあるといえそうだ。
このようにティール組織では特定の人に権力・権限が集中しないからこそ、おのずと会話の中身が変わる。対話を重視したコミュニケーションは、相手が自ら思考して決断をするプロセスに伴走する「コーチング」に近い。それならば今すぐに組織を構造から変えることができなくても、コミュニケーションを変えることで部分的にティール組織の要素を取り入れられるのではないだろうか。
役職を廃止し、ピラミッド型の階層構造をフラットにすることは難しいかもしれないが、「上司が決めすぎない(部下が考える余地を残す)」ことで、セルフマネジメントの足掛かりになるだろう。
経営ビジョンを社員発信で変えるのは大がかりだが、部門ごとの小さな単位で自組織の存在意義を議論してみんなでビジョンをつくることだって可能だ。いち社員からすると意見を出すことに慣れていないかもしれないが、そんなときは上司から自己開示をして話しやすい雰囲気をつくってみてはどうだろう。
しかし、部分的な実践で、はたしてティール組織と呼べるのかと疑問が浮かんだかもしれないが、ご安心いただきたい。ティール組織にはそもそも明確な構造がなく「有機的な組織」という定義だからこそ、オレンジやグリーンの組織モデルと組み合わせても十分機能する。
たとえば、「平常時は社員の自主経営(ティール)だが、緊急時にはピラミッド型の指揮命令系統を行使する(オレンジ)」といった組み合わせも有効だろう。
逆説的にいえば、固定化されたモデルではないからこそ既存のモデルから徐々にティール組織へ移行していくような「プレティール組織」を目指すほうが効果的な進化の道筋だ。
一気には変えないからこそ最も重要なのは、上司から変わること。自らがコミュニケーションスタイルを対話型に変え、権限を率先して部下に渡していくことへの覚悟が、未来型組織への進化には求められているのかもしれない。
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