ポルシェ「電動化へ舵」の大英断ができたワケ 初のEV「タイカン」来年発売に向け準備が進む

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このほどポルシェは、タイカンが製造されるシュツットガルト市内のツッフェンハウゼン工場の新ラインを公開した。この工場では、911など2ドアの車種を中心に、年間約5万2000台を製造する。その狭い敷地に横たわるような形で、タイカンのラインを建設中だ。

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年間2万~2万5000台を生産予定で、1200人の追加雇用も決定している。しかし、タイカンは4ドアであることから、生産や調達の効率を考慮すると、ベストな選択だったわけではない。それでもなおタイカンの生産拠点にツッフェンハウゼンを選んだ理由について、アルブレヒト・レイモンド生産・調達担当取締役は、「ポルシェの哲学的・信念的な理由からだ」と話す。

歴史ある工場に最新のノウハウを導入

この敷地内には、創業時から残るレンガ造りの建物が2棟ある。本社機能を果たすこの建物にCEOの部屋もあり、歴代の経営者はここで執務してきた。ポルシェはこの手狭な工場を、自らの歴史の原点として大切にしている。

周りは住宅街で、騒音対策などの操業条件も厳しい。それでもメーカーの原点となる場所を電動化の拠点とすることで、ポルシェの覚悟を示せる。そうして「プロダクション4.0」と銘打たれたオートメーションやIoT設備などの抜本的な刷新計画を推進することにした。

ポルシェの「タイカン」を製造する新ラインのイメージCG。車両は自動搬送装置で流れることになっている(写真:ポルシェ)

ライン工程の車両を自動走行させる世界初のシステムを導入するなど、電動車両生産に必要な最新のノウハウをいち早く取り入れることができるという。2019年の完成までに、7億 ユーロ(約910億円)の投資を計画している。かつての栄光を支えたエンジン技術を守りつつも、電動化の方針を明確にしたことはメーカーの覚悟を示すものだ。

しかし、夢や信条だけではいくらポルシェといえどもビジネスとして成り立たない。ポルシェは電動化で、どのように収益化を進めていくのか。

         (後編に続く。後編は11月18日に配信の予定です)

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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