ところが、今年発売された1000XM3は、それを凌駕するノイズキャンセリング能力と装着性、そして高い音質を実現していた。名前こそ“マーク3”だが、基本的にはフルモデルチェンジと考えていい。
執筆現在、市場には1000XM2の流通在庫も若干数あり、価格的には1000XM3よりもお得に見えるかもしれない。しかし、もし旧型モデルに手を出したいと思うのであれば、少なくとも新バージョンの実力を確認してからにしたほうがいいだろう。
筆者自身、これまでに数多くのノイズキャンセリングヘッドフォンを使ってきたが、満足度の高さでは圧倒的と言っていい。1000Xシリーズの実力を知っている人なら、”あれよりもずっと上なんてことがあるのか”と訝しむに違いない。
さらに帯域が広がったノイズキャンセリング能力
製品の細かな機能は、ソニーの公式ウェブサイトをご覧になれば把握できるだろう。ここではいくつか、本機を評価するうえでのポイントに絞って話を進めたい。そのポイントとはノイズキャンセリング能力の高さと音質の高さ、それに装着感のよさだ。
現在のノイズキャンセリングヘッドフォンは、デジタル信号処理で機能を実現しているため、その信号処理の速度によって能力やノイズを除去できる帯域が変化する。今回、ソニーは1000XM3ではこの両信号処理を司るノイズキャンセリング専用のプロセッサーを刷新し、処理能力を4倍高めた。その効果は主に中域において顕著だ。
飛行機内での効果も上がっているが、より効果を実感できるのは電車や自動車の中、あるいは人の話し声が混じる雑踏や混雑したカフェなどでの静寂性を高める。
一般的なノイズキャンセリングヘッドフォンが“アクティブ”に除去できる音は主に低い周波数だ。高めの周波数は密閉型のイヤーハウジングと機密性を高めたイヤーパッドで遮断するというのがセオリーだった。
1000Xシリーズは元々、他社製よりも中域の除去能力が高かったが、1000XM3ではその長所をさらに伸ばして、ほかを圧倒する性能にまで引き上げている。イヤーパッドの形状やフィット感も向上し、トータルで全周波数帯域にわたったバランスのいい効果が得られた。おそらく旧モデルユーザーでも、その違いは“体感”できるだろう。
前述したカフェや電車内などはもちろん、ホテルのロビーや空港のラウンジ、あるいは開放的なシェアオフィスの空間などで使うと、今までよりもずっと質の高い静寂が得られる。たとえ音楽を聴かなかったとしても、その静寂感は仕事への集中を高めてくれるはずだ。
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